FF7連載book
□06
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半月なんてものは、それこそあっという間なわけであり
式典用の制服を着たクラウドは3姉弟に見送られながら世話になった喫茶店をあとにした
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「ザックス!!」
もうすぐ入社式が始まるという時間
お約束のように寝坊したザックスは式場へと全速力で走っていた
それを呼び止める声に踵へ体重をかけ、急ブレーキをかける
「なんだよアンジール!!俺、遅刻しそうなんだってば!!」
「そうだろうな。しかし……その服はなんだ」
「なんだって、2ndの服……って、アンジールこそなんだその格好」
きょとん、と首を傾げたザックスにアンジールは深いため息をつき、その後ろにいたジェネシスは噴き出した
「笑うことないだろー!?つーかあんた黒似合わないな」
「余計な事を言うのはこの口か?」
「い、いひゃひ!!」
みにょん、とザックスは頬を摘み上げられ、抗議するも予想以上に伸びる頬が面白いのかジェネシスが手を放す気配はない
「遊んでる暇があったら着替えてこい!!」
「はひっ!!……って、何に?」
「式典服に決まってるだろう、駄犬が」
「し、式典服!?俺そんなの持ってないぞ!!」
引っ張られた頬を押さえながら慌てるザックスにアンジールとジェネシスは怪訝そうに眉をよせた
「ソルジャーに昇格した時に渡されただろ」
「……待て、去年はどうしたんだ」
一段低くなったアンジールの声にザックスは肩を跳ねさせ、視線を泳がせる
顔も少々血の気が引いたような色だ
「またサボったのかお前は!!」
「アンジール、説教している暇はないぞ」
時間は刻々と迫っている
しかし今年ばかりはサボるわけにはいかなかった
新人の世話役ということで、式後、自分の担当する新人を迎えに行かなければならないのだ
ザックスは先ほどよりさらに顔色を失い、アンジールまでもが青い顔をした
「お、いたいた。ザックスー」
そこへ緊張感のかけらも無い声がした
振り向けば蒼い髪の人物
よく知る人とは髪の長さが違うが、左右異なる色の瞳を持つ者などそうそういるはずがなかった
「フュラーリング統括!?」
「元、な。ほらこれ、必要だろ」
渡された紙袋を覗けば、真新しい黒い服
「これって…!!」
「どうせお前の事だから無くしてんだろ?この間の身体測定の時のワンサイズ上で作らせといた」
「統括ー!!愛してる!!」
「わかったからさっさと着替えてこい」
顔を輝かせ走っていく姿は仔犬そのもの
一同は思わず苦笑を禁じえなかった
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