Long
□第十夜
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黒主学園夜間部
――月の寮
僕が部屋に帰れたのは、明け方だった。
真優を部屋に残したままなのは少し心配だったが、彼女はきちんとベッドの中にいた。
一見穏やかな寝顔
しかしその傍らには、散らばった血液錠剤――
なんとも酷い現実がそこにはあった。
「…真優…」
彼女の頬に手を伸ばす。
手の冷たさが伝わってしまったのだろうか、
真優は小さく身をよじった。
「…んっ…枢?…おかえりなさい」
その屈託の無い笑みに胸が痛んだ。
「ただいま」
そんな感情など微塵も感じさせない笑顔を向けたはずなのに、真優には通用しない。
心底不思議そうな表情で、僕の心配までしてくれる有様だ。
話題を変えたくて、先ほど得てきた知らせを彼女に伝える。
「真優。君の寮生活のことなんだけど、今空き部屋が無いんだよ。」
「そうなの?じゃあ、父さんに頼んでしばらくの間、私的住居区に…」
「いや、その必要はないよ。
幸い寮長室は広く設計されているからね。」
“訳が分からない”
真優の表情には在り在りと浮かんでいた。
「言葉通りだよ。この部屋は僕の物でもあり、これからは君の部屋でもあるんだ…。」
理事長から許可を無理矢理とったことは、真優には秘密だ。
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