SHORT

□過去拍手
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〇 HAPPY Halloween! 〇


『ハロウィン?』

「もうじきあるらしいな」

『……ハロウィンねぇ…』


 もう直ぐ10月の終わりを迎える中、町中はハロウィンで持ちきりだった。
 子供が仮装して、大人にお菓子を貰うという…若干訳が分からんイベントだ。



『お前そんなのに興味あるんだ…』

「興味があるわけではない」

 ただ、と歩いていた足を止めると。

「ショア少佐の仮装した姿がみたいと思ってな」

 マスタングは相変わらずの微笑を浮かべてそう言った。


『……』


 若干引き気味になっていると――


「少佐なら猫とか似合うんじゃないか?」


 ……有り得ない発言。


『阿呆か!! 誰が猫んなるか!』

「それは残念」

『……、』


 いつもの如く、この上司はよく分からない。


―――


「少佐ってやっぱ菓子もらうんスか?」


 喫煙所でのハボックからの問い。
 もちろん俺は面白くない。


『何でそうなる』

「え、だって子ど……」

『誰がおしゃぶり大好きなクソガキだって?』

「いや、そこまで言ってないッス」


 胸ぐらを掴んでいた手を離し、溜め息と共に煙を吐く。


『俺は菓子なんかいらん』

「あ、もしかして甘いもん嫌いッスか?」

『別に嫌いじゃねーけど、何で“トリック オア トリート?”なんて言って菓子貰わにゃいけねーんだよ』

「あははっ…少佐らしいっすね」


 軽く返した俺を見て、ハボックは火を消すと白い歯を見せた。


「大佐の事だから仮装しろなんて言って来たんでしょ?」

『…ああ。なんか猫なら似合うんじゃないか? とかなんとか…』

「あ、確かに似合いそうですね」


 いや何故だ、おい。


『何が嬉しゅーて猫の姿しなきゃいけねーんだよ。犬ならまだしも猫だぞ猫』

「猫の何がイヤなんすか? 可愛いじゃないですか」

『全っ然可愛くねー。ゴッキーのがまだマシだ』

「そこまで?」


 当たり前だ。あんなの地球にいらん。


「でも、大佐ちゃんと仕事してるじゃないすか。最近は」

『……』

「お疲れな訳だし、褒美としてちょこっとっていうのは……」

『やだ』


 拳骨を一発食らわせ、俺は喫煙所を後にした。

 ハボックは頭をさすりながら「もうちょい素直になったらどうスかー?」なんて言いやがるから、一睨みしてやった。

 蛇に睨まれた蛙だな。





―――


 "大佐ちゃんと仕事してるじゃないすか"


 ――確かにそうだ。今もマスタングは書類にペンを走らせている。
 …マジで槍が降るんじゃないか?

 ─カリカリカリッ…

 無造作に響くペンの滑る音。

 妙に部屋が静寂に溢れている気がする。



『……』




 "お疲れな訳だし、褒美として…"




 どうやら明日は人生で、一番最悪な日になりそうだ。



―――


「ハワードとハボックはまだか?」

「まだ来てないみたいですね」

「ハワードが寝坊? 珍しいな」

「大佐が仕事しているのも充分珍しいですよ」


 ロイとリザが話している最中――


「……か…」

『……い…っ…!』


 外が何やら騒がしい。声からしてハワードとハボックだ。ロイが不思議に思っていると、突然扉が開いた。


 ──バタンッ

『うわっ!!』

「!」


 おそらくハボックが背中を押したのだろう、ハワードは少々よろけながら部屋に入ってきた。

 それは良いのだが、ロイが驚いた理由はこれではなく他の事。



「大佐ー、どうっすか? 少佐お似合いでしょ?」


 ハボックは笑みを浮かべて言い、ロイは視界にハワードを捉える。


『にっ、に……にゃーん、』


 若干頬を染めながら呟いたハワードには御丁寧に猫耳と足尾がついており、いつものポニーテールとは違い、ツインテール。
 おまけに服装がメイド服に似ている。コーディネートはハボックがしたのだろうが、どこからこんな物を仕入れたのか謎だ。


『っ菓子くれねーと…いっ、悪戯する、にゃんっ、』

「……」


 硬直して黙り込むロイ。
 さすがにハワードは戸惑いを覚える。


『マ、マスタング…? 大丈…』


 呼び掛けた突如。

 ──バタンッ

 ロイは椅子ごと後ろに倒れ、部屋にいたハワードとハボック以外の皆は慌てて駆け寄った。



「大佐!?」

「しっかりして下さい!」

『???』


 皆が焦りを隠せない中、ハボックはただ1人――

「ちょっと刺激が強すぎたか?」

 そう、苦笑いしていたのだった。






(俺なんかしたか!?)
(…ある意味したかもしんないです)




‐END‐
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