たんぺんだ、コノヤロー

□退廃
1ページ/1ページ



30分くらい歯磨きをする

そういう女だ




退廃





別にあいつは潔癖症なわけじゃない

ただ我を忘れたかのように熱心に歯磨きをする5つくらい年下の女

正確に言うと「女の子」の部類に入る歳なのかは俺にも分からない




とりあえず歯茎から血が出るんじゃないかと少しだけ心配してみる

数分経つと歯磨きをし終えたのかこちらに向かってきた




「すっきりした」


「だろうな」


「銀時、出かけたい」


「はいはい」




俺は返事をしただけであとは静かに小さな手を引っ張るだけ

どこに行くかなんて決めているわけがない




「寒い」


「厚着しろ」


「やっぱり暑い」


「なら薄着になれ」




銀時は色んな言葉の引き出しをを持ってるねなんて言って

結局厚着するわけでもなく薄着になるわけでもなく

小さい歩幅で俺の歩幅に合わせようとする




「海行こ、海」


「海か」


「うん海、魚捕まえる」


「無・理・だ、つか魚なら川だろ」


「そうなの?」


「そうなの」


「じゃあ銀時とならどこでもいいよ」




あてがないからとりあえず海に行ってみようと思った

俺もお前がいればどこでもいいとは思うが
口に出す根性は今は持ち合わせてはいないようだ










退廃的になった俺の彼女は

静かに俺を繋ぎとめた


健全な精神を失って衰えて不健全になったこいつは

崩れる前に俺を繋ぎとめた

俺が繋ぎとめた











海の青さをあいつが知ったと知った時

あいつが泣く前に泣いたのは俺だった





(失うなんて、ありえない)


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ