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□正体
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「それで、

何かわかったのか?

セバスチャン」






ランドル卿、アバーラインが去った来客室。
しばらくの沈黙の後、シエルが口を開いた。






「それはどういう意味です?」






怪しい笑みを浮かべたセバスチャン。
いつしか窓の外は赤い夕日に染まっていた。






「とぼけるな。

先ほどの事件、心当たりがあるんだろう」







夕日などには見向きもせず、シエルはセバスチャンをジッと見つめた。







「…――心当たり、といいますか。

犯人が分かったも同然ですよ。坊ちゃん」







「!」







セバスチャンの思わぬ言葉に、シエルは驚愕した。






「少々厄介ですがね…」





セバスチャンは笑みを崩さない。
よほど今回の事件を楽しみにしているようだ。






「……その薄気味悪い笑みをやめろ。

虫唾が走る」






シエルはくるりと向きを変えると、
ドアノブに手を伸ばした。






「お聞きにならないのですか?

犯人がどのようなものなのかを」
        ・・




「後にする。
少し疲れた。寝る。

お前はホットミルクを僕の部屋まで運んで来い」






「イェス、マイロード」






ばたんとドアが閉まる。

部屋の中にはセバスチャン一人。
薄い暗闇に包まれた彼の瞳は、

紅く鋭く光っていた。

そう、その瞳はまるで…悪魔。











「…――本当に厄介ですね…この事件」









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