long

□来客
2ページ/3ページ





「さて、はるばる僕になんの用かな?

ランドル卿」






塵一つ無いであろう来客室には、
シエル、ランドル卿、アバーライン、
そして執事の、

セバスチャン・ミカエリスがいた。




シエルの見下した態度にピクリと眉を動かしたランドル卿だったが、
コホンと重い咳払いをすると、真剣な表情で語り始めた。






「ここ一週間、
ロンドン全域で連続殺人が起こっている。狙われるのは決まって若い男。
だが、殺された男達には若いということ以外共通点は見当たらなかった。
犯行時刻は真夜中。
未だに犯人を見た者はいない」





それだけ言い終えると、ランドル卿は再び口を閉ざした。





「…それで。
お前達はその事件を僕に?」





シエルはセバスチャンの淹れた紅茶を受け取り言った。





「…チッ……!

…――貴様のような奴に頼むのはシャクだが……っ…。
…そういうことだ」





ランドル卿はシエルのことを

“悪魔”

と呼んでいた。


闇の貴族であるファントムハイヴは女王直属の特務執行機関。
裏の世界を取り締まる存在であり、
警察が太陽であれば、ファントムハイヴは月という関係で、
ランドル卿はシエルを毛嫌いしているのだった。









「腑に落ちないな」




シエルの一声が緊張感溢れるこの空気を貫いた。





「何故この事件を僕が片付けなければならないんだ。

今の説明では、普通の事件となんら変わりない。
表の始末はお前達警察の仕事だろう。
僕には関係ない」






紅茶を飲み終え、シエルは言った。
ランドル卿は小さく舌打ちし、



「アバーライン!」



と叫んだ。



「はいっ…!」



大きく返事をし、立ち上がるアバーライン。
背広の内ポケットから封筒を取り出し、シエルに渡す。






王族の印がきらめく封筒。
間違いなくシエル宛てである。






「…女王からの頼みでもあるのか。
それなら話は早い。

セバスチャン」





シエルの声に、はい。と返事をすると、
セバスチャンはランドル卿に向き直った。





「被害者達はどんな殺され方を?」





ランドル卿はシエルの執事であるセバスチャンにも、シエルと同じくらいの嫌悪感を抱いていた。





「ふんっ!!
アバーライン、答えてやれ」



「は、はい…!

被害者はどれも、とても酷い姿で発見されまして…。



そ、それが…その…――」






口ごもるアバーライン。






「…どうしたんです…?」






セバスチャンの再びの問いに、アバーラインは覚悟を決めたようだ。






「…はい…それが…――。
…被害者は


全身の血液全てを抜かれた状態で発見されました…」






光景を思い出し、アバーラインは真っ青になっていた。











「…――ほぅ…。

全身の血液全て、ですか」










ニヤリと笑うセバスチャンの呟きを、
シエルは見逃さず、ジッと見つめていた。












nextあとがき

次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ