long

□正体
2ページ/2ページ



コンコン



ノックをすれば、決まって帰ってくる言葉。








「入れ」







セバスチャンはそれを確認すると、ガチャリと扉を開けた。

彼の主人はというと、ベッドの中で先ほど貰った手紙を読み返している途中だった。







「何か、変わったことでも書かれているのですか?」







カップにホットミルクを注ぎながら、セバスチャンは聞いた。







「――…いいや。

ただ…今回の手紙からは、
陛下が感じておられる不安が酷く伝わって来る」





手紙を読み終え、ミルクティーを受けとる。







「ふふ…――。

分からないこともないですね…。

それほどこの事件が特別だという証拠ですよ」







小さく笑うセバスチャン。







「……っ…!

いい加減にしろ!!


さっきからお前は…なんだ!
何がそんなに面白い!!

虫唾が走ると言ったはずだ!!」







響くシエルの声。






「…申し訳ございません」





セバスチャンはひざまずいて詫びた。
しかし、その眼は先ほどとかわらず、笑っている。








「つい、浮かれてしまいました。

なにせ久しぶりだったものですから」






「…!?」







“久しぶり”

セバスチャンの言っていることがシエルには理解できない。









「何が久しいんだ」









静かに問うと、セバスチャンは、
主人と同じく静かに答えた。









「私と同じようなものなのです」
                  ・・        








「――…悪魔か」









シエルの反応は冷静なものだった。
大体の予想はしていたようだ。

そして、セバスチャンは答えた。










「…――いいえ。
悪魔ではありません。

先程アバーライン様がおっしゃっていたでしょう。




被害者は"身体中の血液を抜かれた状態だった"と」










「!」







はっと目を見開くシエル。








「おそらく被害者の首筋には歯型があるはずです。

見つけられないとは…
まったく…警察は何をしているんでしょうね?」















消えた血液。

残された歯型。














「―――…ふふっ…。

そうですよ坊ちゃん。







吸血鬼です















「……!」

















改めてその正体を耳にした時、

シエルは……驚愕した。





















前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ