書斎

□観察
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「あのさぁ・・・」
「・・・今度は何だ?」
「横になって?」

ヴィンセントは言われるがままにベッドに横になった。
すると、ユフィはヴィンセントの上に無防備にも馬乗りになってヴィンセントを見下ろした。


横になっても色っぽいとか・・・。
生きる芸術とはこのことか?
ああ、もう!
こんなヴィンセント、絶対誰にも見せたくない!
見ていいのはアタシだけだ!


ユフィは心の中で叫びながらヴィンセントの胸の上で自分の指を滑らせた。


逞しいなぁ。
胸板硬いし・・・。
ていうかアタシ、いつもこの胸板に擦り寄ってるんだ。
・・・・・・
うう、考えると恥ずかしくなってきた。
ていうか全体的に筋肉質だな。
腕とかもかなりガッシリしてるし。
この腕がいつもアタシを翻弄して離さない。
あ・・・また恥ずかしくなってきた。


ユフィは滑らせていた手を赤くなっていると思われる頬に当てて隠した。
小さく俯いてヴィンセントの身体を見渡す。
その時・・・

「〜・・・」
「ヴィンセント・・・?」

ヴィンセントが欠伸をしてウトウトと舟を漕ぎ始めたのだ。

「眠いの?」
「・・・ああ、今日は暖かいからな」

確かに、窓から差し込む日差しは丁度いい具合に暖かく、その上ベッドに横になれば眠くなるのも無理はない。
しかし、それだけではないとユフィは確信した。

「アンタ、最近寝てないでしょ?」
「・・・よく判ったな」
「目に隈出来てるよ」

ホラ、と言ってユフィはヴィンセントの目の下を指した。
薄っすらではあるが、黒くなっている。

「・・・最近、気になる本にハマってな」
「だからって夜更かしするなよ」


折角のキレーな顔が台無しじゃん


ユフィは内心呟いて、ヴィンセントの頬をそっと撫でた。

「寝てな?別にいいから」
「・・・では、遠慮なく」

ヴィンセントはそっと目を閉じた。
しばらく見守っていると、すぐに整った寝息が聞こえた。

「スー・・・スー・・・」

小さく聞こえる寝息に自然と口元が緩む。
こんな無防備で可愛いヴィンセントが見れるのは恐らくユフィだけだろう。
ユフィは優越に浸ってしばらくヴィンセントの寝顔を眺めた。
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