書斎

□観察
3ページ/5ページ

整っている顔立ちに嫉妬する。
同時に、自分は劣っているのではないかと思い込む。
悔しく思いながらも、その細い指で、自分の名を呼び、愛の言葉を囁いてくれる唇をそっとなぞる。
何となく触れてみたくなって、片手をヴィンセントの頭の横について、屈む。
いくら相手が寝ているとはいえ、やはり恥ずかしいのでユフィはそっと目を瞑って自分のそれとヴィンセントのそれを重ねた。

「んっ・・・」

深く口付けていると、急に後頭部を押さえつけられて、世界が反転する。

「んんっ・・・!!」

目を開きたいけれど、開けば紅の瞳が自分を見つめている。
よって、ユフィは目を開けることが出来なかった。
しばらくそのまま深く口付けされながら髪を数回梳かれる。
そして、ぺロリと舐め上げられて、ユフィの唇からヴィンセントは離れた。

「はぁっ・・・!」
「・・・お前も大胆なことをするな」

目を開けて見れば、予想通り面白がるように覗き込む紅の瞳があった。

「い、何時から起きてたんだよ!?」
「・・・さぁな?」

ヴィンセントは軽く流して再びユフィにキスをした。

「んっ・・・あ、ねぇ」
「・・・ん?」
「ちょっとそのままの体勢でいて?」

そのままの体勢とは、ユフィの頭の両サイドに手をつき、見下ろしている体勢だ。
じっくり観察してみれば、影がかかっている身体が自分を誘惑していた。
傷跡なんかは、過酷な実験を乗り越えて来たのだと思わせる反面、逆にそれがヴィンセントを引き立たせているようにも見えてユフィを悩ませる。
そのまま見とれていたユフィは、ふとヴィンセントの視線に気付く。
見上げれば、そこには悲し気に目を細める紅があって・・・

「ご、ごめん。そんなつもりじゃないんだ・・・」

気まずそうに謝れば髪を梳かれた。

「本当にごめん。嫌、だったよね・・・?」
「・・・ああ、そうだな」

やっぱりと思い、ユフィは深く反省した。
いくら見とれていたとは言え、ヴィンセントからしてみればいい気分はしない。
傷つけてしまったと落ち込んでいると、ヴィンセントがゆっくりと口付けてきた。

「・・・私は傷付いた」
「ご、ごめん・・・っ・・・」

啄ばむようにキスをするヴィンセントに許しを請うように答えるのと、少しばかりの疑問を抱く。


何か・・・変。
こう・・・企んでいるような。
ていうか、あれ?
あんまり雰囲気が暗くないような・・・
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ