書斎

□初めての朝
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誰かが自分の髪を梳いている感覚がする。
規則正しく、でもどこか優しく梳いている。
耐えきれずに目を開けたら、紅の瞳と視線がぶつかった。

「・・・ユフィ」

紅い瞳が優しく細められ、ユフィの唇がやんわりと塞がれる。

「ん・・・」

壊れ物を扱うようなガラス細工を扱うような口づけ。
少しすると離れてしまったが、ユフィはそれを追いかける元気がなかった。
普段ならすかさず追いかけるのだが、どうしても身体がだるくて、動く気になれない。
しかし、だるい筈なのに心地よいと思ってしまうのは何故だろう?
身体全体に毛布の感触を感じるのは何故だろう?

「・・・おはよう」
「おは・・・よう?」
「身体は大丈夫か?」
「へ・・・?身体・・・?」

ヴィンセントに言われて自分の身体を確認する。
これといった外傷は見当たらない。
昨日は今日と同じでWROでの仕事がなかったから傷もない筈・・・。
違うのは、自分が何も纏って・・・ない?

「・・・!!!」

ユフィの記憶が一気に蘇る。

そうだ、アタシ・・・
ヴィンセントが風呂から出た後、次に入って・・・
悪戯のつもりでタオル一枚で出てきたらヴィンセントにベッドで口づけされて押し倒されて・・・
進むことになって・・・

ユフィの顔はボンッと音を立てそうなくらいに真っ赤になって、瞬時にヴィンセントに背を向けた。

「・・・ユフィ?」
「あ、あの・・・!その・・・っ!」
「・・・どこか痛むのか?」

言われて自覚する。
足が痛むことに・・・。

「あ、足が痛い・・・」
「・・・大丈夫か?」

ヴィンセントがそっと触れてきて、ビクッと震える。

「・・・すまない」

明らかに悲しみを含んだ声。
ユフィはすぐに弁解した。

「ヴィ、ヴィンセントは悪くないよ!全然っ!」
「・・・では、何故私の方を見ない?」
「だ、だって・・・」

ヴィンセントは静かにその言葉を待つ。
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