書斎

□乗り物酔いのメリット
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シエラ号

今日は英雄メンバーでコスタ・デル・ソルに行くこととなった。
勿論、シエラ号で行く訳だが、それに当たって苦しむのは―――ユフィだ。

今日も“いつもの場所”で乗り物酔いと悪戦苦闘をしている。
今は乗り物酔いの方が優位でユフィの体力は瀕死状態。
そんなユフィに仲間たちは声を掛けて労わってやりたい所ではあるが、本人が「ほっといてくれればそれでいい」と言うので皆、ほっといているのである。
しかし、そんなユフィの前に誰かが立ちはかった。

「・・・まだ気持ち悪いか?」

ゆるゆると見上げれば、そこにいたのはヴィンセントだった。

「当たり前・・・じゃん・・・ううぇっ」

地面に両手を突いて苦しむユフィは、ヴィンセントが妖しく笑ったことを知らない。

「・・・そうか。それは大変だな」


他人事だと思いやがって・・・。


心の中で悪態をつくユフィに構わず、ヴィンセントはユフィをお姫様抱っこした。

「う、わ・・・!な、何して・・・うううっ・・・」
「・・・ほら、暴れると余計に気持ち悪くなるだろう?大人しくしていろ」

そう言い放つ声は何かを企んでいるようで・・・。
ユフィは嫌な予感をしつつも乗り物酔いに耐えることに専念した。








部屋に来るまで、誰にも会わなかった。
ある意味奇跡であるが、今のユフィはその奇跡でこの乗り物酔いを治してもらいたい気分だった。
つまり、乗り物酔いが少々悪化して頭がグルグルしてきたのだ。
吐きそうになるのを必死に堪えている時に、どこかでカチャリと何かが閉まる音がしたがグルグルする頭では判断は出来なかった。

「・・・とりあえず、横になれ」

ヴィンセントがそっとユフィをベッドに降ろす。そして靴を脱がしてあげる。
ベッドは気持ちいいが“いつもの場所”の方がよっぽど気持ちよく感じられるように思える。

「ベッドじゃ・・・ちょっ、キツ・・・」
「・・・それはいかんな。今すぐなんとかしてやろう」

そう言ってヴィンセントは靴を脱ぎ、ユフィの上に覆い被さった。
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