古書T

□カオスと夜のデート
1ページ/3ページ

ある夜のことだった。
ヴィンセントはいつものようにベッドで眠っていた。
しかし、少し違うのは睡眠がいつもより深いこと。いつもだったら睡眠は浅いのだが、今回は特別深かった。

理由は一つ。

寝る前にユフィと二人っきりで星空の下、他愛のない話を交わしてお休みの挨拶をしたからだ。

ビビの占いで屋上で星を眺めると吉、というのを信じて行った甲斐があった。

詰まる所、幸せと喜びで一杯だということ。
それで睡眠が深いってこと。

(久しぶりにいい夢が見れそうだ)

柄にもないことを考えながらも・・・。
しかし―――

「借りるぞ。だが、これもお前の為だ」

ヴィンセントが目を覚ました、
いや、正確にはヴィンセントではない。

カオスだ。

カオスが深く眠っているヴィンセントの隙を突いて、身体を乗っ取ったのだ。

「さて、着替えは・・・」

カオスは服を探して着替え、マントを着てバンダナを巻く。
いつもの普通のヴィンセントと大差変わりないが、違うのは目の色。
良く見なけばわからないが、そんなものはどうでもいい。
だが、その時―――

「ヴィンセント〜・・・?どっか行くの〜?」

アーヴァインが寝ぼけた声で尋ねる。

「・・・トイレだ」
「そう〜・・・」

アーヴァインは納得して再び目を閉じた。

(あれ?ヴィンセントってトイレのことお手洗いって言ってたような・・・ま、いっか)

アーヴァインは気にせず、夢の国へ行くことを決めた。








女子寮006号室前

意識を部屋の中へと集中させて気配を探る。

・・・・・・

部屋の気配が静まり返っていることを確信して、カオスはそっとドアノブに手を掛けて音を立てないように開ける。
素早く部屋に入ってドアを音もなく閉める。

ターゲット発見。

カオスはそっとベッドに近づく。
少しだけ布団を捲って確認をする。
そこには、気持ちよさそうに眠るユフィの顔があった。

「少し付き合ってもらうからな」

カオスはニヤッと笑ってユフィの額に口付けをする。

着て来たマントでユフィを包んでそっと抱き上げる。

―――簡単に言えばお姫様抱っこである。

部屋を出て屋上へ・・・。




屋上

気持ちのいい夜風が吹いていた。
夜空は数時間前、ヴィンセントの中で見たのと同じ、満天の星が広がっていた。
この身体の中で眠るこの身体の持ち主は未だ深い眠りに就いている。

腕の中の少女はまだ、目を覚ましそうにない。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ