古書T

□温泉と卓球
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これは、『からくりホテル』で混浴に入ったヴィンセントとユフィのお話。



混浴なだけあって、露天だった。
色々な風呂があって、ヴィンセントは眺めのいい風呂に入った。

(ユフィが来たら・・・いいのだがな)

などと叶わぬ期待を胸に目を瞑ると・・・

・・・ヒタ・・・ヒタ・・・

微かに足音が聞こえてきた。
誰か他にも入ってきたのだろうか?

アーヴァイン?
クラウドかスコール?
それともギップルかジタン?

だが残念だな。
ここには無口な男しかいない。
がっかりする顔が目に浮かぶ・・・。

そこまで考えて、ヴィンセントは静かに笑った。が―――

「どっちから行こうかな〜」

ビクゥッ

ヴィンセントの意中の―――ユフィの弾む声が聞こえてきたのだ。
そう、ユフィの声が・・・


ユフィか?
ユフィなのか!?
ま、まさかそんないやしかし・・・!!
そういえばユフィは風呂好きだったな・・・
だからと言ってこんないや、ここは混浴だ!!
何があってもおかしくはないし変な目で見られることもない・・・!!
だが・・・


ユフィが水着姿でいることを考えると、興奮せざるを得なかった。

「誰もいない・・・あ、ヴィンセント」

ユフィがヴィンセントの浸かっている風呂に現れた。
ユフィは去年の夏から着ている、水色のビキニを着ていた。
それはそれはヴィンセントの目の保養にもなり、何かを掻き立てるのだった。

(去年の夏から見ている筈なのに・・・!)

「ヴィンセントもここに来ていただんだ」
「・・・ああ、興味があったからな」
「そーなんだ〜」

チャプン、とユフィも同じ湯船に入ってくる。

「ヴィンセントの他に誰かいる?」
「・・・いや、私だけだ」


出来ればもう誰もこの混浴に入ってこないでくれ。


ヴィンセントのささやかな願いだった。

「気持ちいいよね〜!夜景を眺めながら風呂に入るってのは」
「・・・そう、だな」

ヴィンセントはユフィを見ているだけで十分だった。いや、十分過ぎた。
もう頭の中は夜景所ではない。
ユフィの水着姿で一杯だった。


何時見ても可愛いな。
だがビキニとは・・・大人っぽいな。
しかも肌は全体的に健康的な色をしている・・・。
・・・・・
み、見てはダメだ・・!
胸が・・・普段より大きく見えて・・・!
き、気のせいだ!!
だが、心なしか・・・
いやいやいや!!!


「どしたの?難しい顔して」
「・・・何でもない。その・・・あれは何だろうかと思ってな」

ヴィンセントは誤魔化す為に、近くにあった大きな釜を差した。

「ああ、あれは『五右衛門風呂』って言うんだよ」
「・・・『五右衛門風呂』?」
「詳しく説明すると長くなるんだけど・・・まぁ、下にあの蓋を敷いて入るんだよ」
「・・・そうなのか」
「入ってみる?」

勿論、首を横に振るわけもなく・・・

「・・・ああ」

と、頷くヴィンセントがいる。
「じゃあ入ろう!」とユフィが立てば、水が大きく滴り、どこか色っぽい。





五右衛門風呂に入ったのはいいが、これは一人ずつしか入れない。
その上、見えるのは相手の顔だけ。
よって、ユフィの水着姿は全く見れなかった。

(先程よく堪能したからいいが・・・もっと見ていたかったな・・・)

「ふい〜、いい気持ち〜!!」

ユフィの気持ち良さそうな顔とは裏腹に、ヴィンセントは半ば悔しそうな顔をしていた。






その後、二人で全部の風呂に入った。
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