古書T
□デート
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「あ〜あ〜・・・」
ユフィは肩を落として項垂れていた。
「・・・そう気を落とすな」
それをなだめるのはヴィンセント。
ここは『アルベド ビーカネルホテル』。
種類豊富の屋外プールと大きな遊園地と温泉がある巨大なリゾートホテル。
リュックの父親のシドが新しく建設したリゾートホテルだ。
新しく出来たのと出来栄えが中々だったので、シドは気前よく三年生たちの夏休みの思い出作りということと最初の客ということを兼ねて二泊三日のバカンスに招待したのだ。
しかも、リュックの大切な仲間であり友達ということで、タダでスイートルームに入れてくれたのだ。
ユフィとヴィンセントを除いた三年生一同は今頃プールで楽しく泳いでいるだろう。
対する二人は遊園地にいた。
何故か?
それは・・・
「あ〜あ、ホント最悪!!」
「・・・仕方ないだろう。お前が不注意だったのがいけないんだ」
ユフィは昨日、旅館内をセルフィたちと移動している時に階段から落ちた。
別段高くなかったので大事には至らなかったが、最悪なことに足を捻ってしまったのだ。
歩くことはあまり困難ではないが、走ることやましてや泳ぐなどと言うやや激しい運動は無理だとみんなに判断をされた。
一人でみんなが泳ぐ姿を眺めていてもつまらないだけだし、ゲームセンターに行こうにも一人では少々危険だし何より虚しい。温泉に行っても一人では寂しい。だが、そんな時にヴィンセントが、自分はユフィと一緒にいると自己申告したのだ。
しかし、二人で部屋にいても退屈で、ゲームセンターは夜にみんなで行く約束。なので二人で遊園地に来た。
そして冒頭に繋がる。
「だけどさぁ・・・入りたかったな、プール・・・」
「・・・その足では仕方あるまい。フリーパスもあることだし、今日は私と二人でこの遊園地を楽しもう。な?」
「でも昨日乗り尽くしちゃったじゃん」
口を尖らせるユフィ。
そう、ユフィは昨日、セルフィたちやヴィンセントたちと目玉とも言えるアトラクションを乗り尽くしたのだ。
もう一度乗るのもいいのだが、今はそんな気分ではない。
しかし、ヴィンセントは・・・
「・・・乗っていないアトラクションがある筈だ。それを探してみないか?」
と提案してきた。
「え?」
「・・・案外乗っていなかったアトラクション程、面白いのかもしれないぞ?」
ユフィは一瞬考え、面白そうといった顔をしてその提案にのった。
「いいじゃんそれ!早速探そう!!」
「・・・決まりだな。最初はあれなんかどうだ?」
そして二人は最初の乗っていないアトラクションへと歩き出した。