巻物

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アーヴァイン「いないね〜」
ヴィンセント「油断するな。潜んでいるのかもしれん」

室内を確認しようと二人が二歩、三歩と足を踏み入れた瞬間―――

ガチャッ

背後で幾つもの金属音が響いて二人の足はピタリと止まった。
音的に物騒な金属音である事は間違いない。
二人は背後の状況について目線で会話をする。
と、その時、静まり返った空間に一人の男の声が響き渡った。

「そこまでです」

ヴィンセントとアーヴァインは同時に男の方を振り返った。
整った顔立ちに漆黒の黒髪、軍服を身に纏っているとはいえ華奢に見える身体。
位の高そうな軍服を着て多くの皇国兵たちの前に出ている辺り、高い地位にいるのは一目瞭然だ。

「随分とやってくれたようですがそれもここまでです」

アーヴァイン「それはこっちの台詞だっての・・・」
ヴィンセント「お前たちの方こそ人様の土地で色々やってくれているようだが?」

「少々お借りしているだけです。用が済み次第撤退する予定です」

アーヴァイン「えっと・・・アンタ、名前は?」

「フェイスです」

アーヴァイン「あのさフェイスさん、借りるだけなら何してもいいと思ってんの?
       アンタたちが連れてきたり合成したモンスターがトラビアの自然の生態系を崩して
       大変な事にでもなったらどうするつもりなの?」

フェイス大佐「心配には及びません。観察を終えたモンスターは随時祖国へ持ち帰っています。
       万が一何かあれば、予めモンスターに付けておいた爆弾を爆発させるつもりです」

ヴィンセント「本当にそれで済まされると思っているのか?」
アーヴァイン「どう考えても自分たちの国が被害を被りたくないから他の国でって感じだよね。
       しかも、あわよくばトラビアを征服しようってのが見え見え」

冷たく言い放つアーヴァインの瞳は同じように冷たい。
かなり怒っているようだ。

フェイス大佐「そ、そんな事は・・・!」

ヴィンセント「図星だろう?皇国の事だからやらないとは言い切れない」
アーヴァイン「どんなにアンタが否定しようともシド=オールスタインの命令によっては全てがひっくり返る。
       シドがやれと言ったら絶対に成し遂げる。違う?」

フェイス大佐「悔しいですがその通りです。ですが、シド様はお考えがあって行動なさっている。
       そしてそれは何れ我々皇国民を救う未来に繋がる。そう確信しているからこそ我々は指示に従うのです」

アーヴァイン「未来ね〜・・・うっさんくさ」

フェイス大佐「なんとでも言うがいい。どちらにせよ、貴方たちを侵入者と見なし、排除します―――構え!」

フェイス大佐の合図と共に兵士たちが銃を構える。

フェイス大佐「撃て!!」

間を置かずして出された合図により、兵士たちは一斉に射撃を開始した。
ヴィンセントとアーヴァインは咄嗟に身を翻して扉の両側に張り付く。
二人は兵士たちが弾を装填する一瞬の隙を突いて壁の影から兵士たちを確実に撃っていく。
けれど装填し終わった兵士やまだ弾が尽きていない兵士が随時射撃してくる為、そう多くは撃ち抜けない。

アーヴァイン「やっぱこういう展開来ちゃうか〜」
ヴィンセント「こういうのはお決まりだからな」

フェイス大佐「相手は相当の腕利きだ!皆、注意しながら前進せよ!」

皇国兵『はっ!』

フェイス大佐の指示に従い、兵士たちはヴィンセントとアーヴァインの射撃に注意しながら前進する。
距離はそう遠くないので兵士たちが突撃してくるのもそう遅くはない。

アーヴァイン「敵を一掃する為の一撃必殺と言えば?」
ヴィンセント「召喚」
アーヴァイン「正解!僕に任せて」

小さく笑ってみせて、アーヴァインは集中モードに入った。
頭の中でこれから召喚する召喚獣の姿を思い描き、呪文を唱える。
雷を司る雷鳥が降臨し、皇国兵たちに雷の雨を降らすビジョンが鮮明化する。
兵士たちが部屋に足を踏み入れようとするのと同時にアーヴァインの詠唱が終了した。
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