巻物

□T
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「ねぇ、折角だから一緒にクリスタル探そう?」
「・・・私は―――」

「おんや〜?ヴィンセントじゃないですか〜」

どこからともなくピエロみたいな奴が現れた。
確かケフカだっけ?
すると、ラグナが驚く。

「お前、カオスの戦士のフカフカだな!?」

「そうそう、飾りがフカフカでお馴染のフカフカ・・・って違〜う!!
 ボクちんは、ケ・フ・カ!!」

この二人、組ませたら面白いかも。
それよりも、何でケフカが親しげにヴィンセントに声をかけたんだろ?
敵同士の筈なのに・・・。

「お前ら気をつけろ〜、早速カオスの戦士のおでましだからな」

「なーんだかみんな、ボクちんに警戒してるみたいだけど―――
 それはもう一人いるんじゃないか?」

急にケフカの顔と声が真剣なものになる。
しかし次の瞬間、ケフカは笑顔になってヴィンセントを指した。

「そこにいるヴィンセントだって、カオスの戦士なんだぜ〜?」

アタシは耳を疑った。

「え・・・?」

「あっれ〜?ヴィンセント君まだ言ってなかったの〜?
 自分がカオスの戦士だって事をさ〜!!」

ケフカがさも楽しそうに言い放つ。
その間も、アタシはヴィンセントを見つめていた。

「カオスの戦士だと?」
「おいおい、まさかのセシルとゴルベーザみたいな関係になるのか!?」

スコールとラグナも驚く。

そんなの信じたくない。
だって、ヴィンセントがカオスの戦士なんておかしいもん。
何かの間違いだよ!

アタシはやっとの事で口を開いた。

「嘘・・・だよね?ヴィンセント―――・・・」

アタシは何度も心の中で願った。
でも、現実はそうも行かない。

「・・・本当だ」

「嘘だよね?嘘って言ってよ・・・!」

「ざ〜んねん!嘘じゃないんだよな〜、こ・れ・が!!
 ぜ〜んぶ事実!!現実なんだよ〜!!」

「信じるなユフィ!アイツの事だ、全部嘘に決まってる!」

ラグナが銃を構えてケフカに向ける。
次いで、スコールも構えた。
でも、ケフカは余裕だ。

「あらら?まだ信じないみたいだね。
 見せてやんなよ、ヴィンセント。お前がカオスの戦士だという証拠をな」

ケフカが邪悪な笑みをヴィンセントに向ける。
すると、ヴィンセントは右手のグローブをそっと外し始めた。
アタシの呼吸は早くなる。

「・・・」

お願い、見せないで。

「はぁ・・・はぁ・・・」

「・・・」

いや―――!

「・・・」

ヴィンセントが完全にグローブを外して、手の甲をアタシたちに見せた。
手の甲には、ここに来る途中の『ひずみ』で見かけた混沌の烙印に似たものが刻まれていた。
それが暗に何を示すのかは明白である。


「はいは〜い、みんな見える〜?これは知ってるよね?見た事あるよね!?
 そう!これはヴィンセント君だけに与えられた特別な印『カオスシンボル』さ!!!」


ケフカが高らかに言い放つ。
その間もアタシは『カオスシンボル』と呼ばれたそれを見つめていた。


「カオスシンボル?」


スコールが尋ねる。


「そ〜さ!ヴィンセントだけ特別に与えられたカオスの戦士の証!
 これで判っただろ〜?ヴィンセントはカオスの戦士!!
 そして、お前たちの敵なのさ〜!!」

「嘘だ!!!」

アタシは思いっきり否定した。
認めたくない。

でも、意外にもヴィンセントがそうはさせなかった。


「・・・本当だ、ユフィ。―――私はカオスの戦士だ」

アタシは何を言えばいいのか判らなくて言葉を無くした。


「はいはいはいはい、そういう訳だから諦めなさ〜い!!
 ほらほらヴィンセント〜、君の初陣だよ?張り切って行きましょー!!」

「・・・いや、今回はいい」


騒いでたケフカはピタリと止まって、ある意味がっかりしたような表情をヴィンセントに向けた。
まぁ、折角盛り上げた(?)雰囲気を一瞬にして沈められたのだから仕方ないけど。
ケフカはやや拗ねたような声音でヴィンセントに文句を言う。


「何だよ?戦えないのか?」

「・・・今はまだ戦う時ではない。それに、2対3だ。分が悪い」

「あ〜っそ、そうですか。
 じゃあ、今日は見逃してあげるよ。感謝しろよ〜?」

「誰がするか!」


ラグナは怒りの篭った声で叫んだ。
そして、ケフカとヴィンセントは静かに消えた。
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