巻物

□V
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その頃、星の体内ではヴィンセントとセフィロスの激闘が繰り広げられていた。
状況的にはセフィロスの方が有利で、やはりと言うべきか。
それでもヴィンセントは諦めなかった。


「そろそろ諦めたらどうだ?お前では私を倒す事は到底出来まい」

「・・・だろうな。その役目はクラウドのものだからな。
 だが、私もここで退く訳にはいかない」

「あの小娘の事は諦めろ。今頃カオスに消されている筈だ」

「黙れ!」


ヴィンセントはセフィロスに向かって三回発砲した。
しかし、セフィロスは難なく、むしろ優雅にそれを避ける。


「・・・ユフィはまだ、生きている」

「どこにそんな確証がある?」

「・・・私はユフィを信じている。ちょっとやそっとの事で死んだりはしないと」

「どうだろうな。現実とはいつでも残酷なものだ」

「・・・言われなくても判っている。だが、諦める訳には行かない。
 ユフィは私の“カオスシンボル”の呪いを解く為に様々の事を尽くしている。
 例え、私に傷つけられようと彼女は諦めず、抗って仲間と共に方法を求めて彷徨い歩いていた。
 そこまでしてもらいながらユフィを信じないのは本当の意味で彼女を裏切る事になる」

「・・・何が言いたい?」

「私はユフィを信じる。まだ消されていないと信じて助けに行く。
 例え私の方が手遅れになってカオスの戦士になろうがカオスに消される事になろうが
 私はこの命に代えても彼女を救ってみせる!」


ヴィンセントの脳裏にユフィとの日々が蘇る。
笑い、時に怒って喧嘩をし、そして仲直りの繰り返しをして育まれる絆。
いつも傍で楽しそうに話しかけ、華のように笑うユフィ。
それはいつしかヴィンセントにとって“当たり前”の事になり“特別”なものになっていた。


険しい表情でセフィロスに向かってケルベロスを構えるヴィンセント。
突然、目の前に眩い光が現れる。


「!?」


あまりの眩しさに一瞬目を閉じるがすぐに目を開く。
目の前には―――美しく光輝くクリスタルが存在していた。


「これは・・・?」

「クリスタルだ。どうやらお前の“覚悟”に反応して輝きを示したらしい」

「“覚悟”?」


しかし、セフィロスは答えないで正宗を下ろした。
それどころか戦意すら消えていた。


「あの小娘の所に行きたくば行くがいい。私は止めはしない」

「・・・そうさせてもらおう」


ヴィンセントがクリスタルに手を翳すとクリスタルは消えた。
それを確認したヴィンセントはセフィロスの横を通り抜け、《混沌の果て》へと歩を進めた。


ヴィンセントが行ってから少しして、ジェクトとゴルベーザがやってきた。


「漸くヴィンセントがクリスタルを見つけられたな」
「お疲れさん、英雄さんよぉ」
「暇潰しにやっただけだ」

「それにしても中々の劇だったと思うよ」


上方にある岩場からクジャがゆっくりと下降して来る。
どうやらクジャもセフィロスとヴィンセントのやり取りを観戦していたようだ。


「クジャも見ていたのか?」
「まぁね。ヴィンセントがどんな“覚悟”を見せるのか興味を持ってね」
「アイツも若ぇのに熱い事言いやがるぜ!」
「・・・確かあの男は私たちよりは年上だったと思うぞ」

「「「年上!!?」」」


セフィロス以外の三人は声を揃えた。
ゴルベーザが尋ねる。


「それは本当なのか、セフィロス?」
「ああ、50前後はいってる筈だ」
「それなのにあの外見って・・・一体何がどうなってやがる?」
「さぁな。あの男も神羅に関わった身だ。
 何をされてようが驚きもしない」
「その神羅っていうのは永遠の美について研究してるのかい?」
「いや、そうじゃないが」


この後しばらく、四人の会話は続くのだった。
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