巻物

□製作日
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ユフィ・セルフィ・リュックこと三人娘は大型スーパーに買い物に来ていた。
目的は勿論、バレンタインの材料調達だ。
ユフィはヴィンセントに、セルフィはアーヴァインに、リュックはギップルに本命チョコを渡すつもりである。
今までは勇気がなくて義理という道に逃げてチョコを渡してきた。
だから今年こそは本命チョコを渡すのだ。
そう、今年こそは―――。

「金型の種類ってそこそこあるんだね〜」
「手芸屋さん行ったらもっとあると思うで〜」
「まぁ、今回は別に手芸屋行く必要ないけどね」

言いながらユフィたちは丸や四角の金型に手を伸ばす。
しかし、どういう訳か三人共ハートの金型には手を伸ばそうとはしない。

「大小様々やな〜」
「ね〜」
「お、こっちは星型か」

そうやってしばらくハート型を避けていたが、とうとうリュックが耐えかねて切り出した。

「も〜逃げてても仕方ないよ!早くハート型買って帰ろう?」
「そないな事言われても・・・」
「いざ買おうかと思うと情けない事に勇気が・・・」
「その気持ちは判らないでもないけど・・・」

しばし三人でハートの金型を睨みつける。
だが、本当にもうこうしてでも仕方ないのでやけくそになってハートの金型を掴んだ。

「もーどうにでもなれ!」
「取ったるわ!」
「負けないぞ〜!」

だったこれだけの事に何故覚悟を決めなければならないのか。
普通に手に取ってカゴに放り込むだけの事ではないか。
やはり想い人の為に作るのだと考えると緊張するものであろう。
さて、なんとか必要な物を揃えた三人はレジで会計を済ませようとしたのだが・・・

「ありがとうございました〜」
「いらっしゃいませ」
「1697ギルになりまーす」

なんと、アーヴァイン・ヴィンセント・ギップルがレジで会計をしているではないか。
三人は光の速さでレジから見えない所の売り場に逃げると、会議を始めた。

「なんでいるの〜!?」
「そういえば、ギップルが二人を誘ってたような・・・」
「あかん、もうどないしたらええねん。他の店行くにしても時間も元気もないし・・・」

「三人共なにしてるの?」

後ろから声をかけられて振り返ってみると、そこには近所の知り合いのエルオーネがいた。
片手にチョコの材料が入っているカゴを持っている所を見ると、彼女もバレンタインの材料を買いに来たようだ。

「エルおねえちゃん!エルおねえちゃんも買い物?」
「ええ。セフィロスたちにチョコあげようと思って」
「セフィロスには本命だったりして」
「ふふ、それはどうかしら?」

ユフィが茶化すがそれをエルオーネは笑って上手くかわした。

「それで?三人はどうしたの?」
「実はかくかくしかじかで・・・」
「ふーん、レジにね・・・」
「エルおねえちゃん、お願い!アタシたちの代わりに買ってきてくれへん?お金は後で払うから!」
「アタシからもお願い!」
「お願い!」
「いいわよ、私に任せて」

「「「ありがとー!」」」

エルオーネが快く承諾してくれて三人は喜びの声を上げた。
とりあえず一難は去ったと言えるだろう。
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