巻物

□バレンタイン
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「おーっす」
「まみむめも!」
「おはよ〜」

「おはよう」
「まみむめも〜」
「おー」

もうどうにでもなれ精神で登校した三人はいつものようにヴィンセントたち三人と合流した。
さて、ここからが闘いの始まりである。
どのようにしてこの想いを伝えるかが重要になってくる。
去年までのように義理に逃げるような真似は決してしてはいけない。
でなければいつまでたっても前に進めないのだ。
切り込み隊長としてユフィが切り出す。

「あのさ、今日って―――」
「今日ってバレンタインだよな〜。いくつ貰えたか明日報告しようぜ」

切り出そうとしたがギップルに先を越された。
出鼻を挫かれた感じがしないでもないがそんな事は気にしない。
それよりもチャンスだ。

「え〜?ギップル大丈夫〜?心の傷を抉る事になるかもよ〜?」
「どーいう意味だよ!そういうアーヴァインは大丈夫なのかよ?心が複雑骨折するんじゃねーか?」
「僕が毎年どれだけ貰ってるか知ってるでしょ〜?」
「アーヴァインは毎年大体、紙袋二袋分だったな」
「ヴィンセントもそうじゃ〜ん」
「俺だって二袋分貰いました〜」
「え?あれ自分で買ったんじゃないの〜?」
「違うわ!!」

男子特有の楽しげな会話にバレンタインの話題。
この流れはいける。
渡すなら今だ。
そう確信した三人は早速チョコを渡そうとしたのだが―――

『せんぱ〜い!』

複数の女子生徒たちが駆け寄ってきてあっという間にヴィンセントたちを囲んでしまったのだ。

「先輩、受け取って下さい!」
「アーヴァイン先輩好きです!」
「こ、これ!!」
「私のも!」
「ギップル先輩、今度の試合の応援行きます!」

女子生徒たちはこぞってバレンタインチョコを三人に差し出す。
三人はそれなりに対応しながらチョコを受け取っている。
先手を打たれて出すに出せなくなったユフィたちは次の行動に出た。

「相変わらずモテモテだね〜」
「ほんならアタシたちは先に行こうか」
「じゃ、おっさき〜」

「あ、おい!!」

ギップルが止めようとしたが無視して三人は一足早く学校へと向かった。
時には退却をする事も大切である。
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