巻物

□バレンタイン
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さて、教室の隅っこにて作戦会議を始める三人。
ちなみに机の中や下駄箱の中に入れるという案はとっくに没になっている。
直接渡す事が課題なのだから。

「どーする?呼び出して渡す?」
「休み時間に〜?」
「勿論昼休みにだよ」
「他の人も誘ってきそうじゃない〜?」
「でもそうなるといつまでたっても渡せないよ〜」

さて、どうしたものか。
デコペンで何を書くか悩んだ時のように三人は頭を捻った。
いい案が浮かびそうで浮かばない。
だが、そうこうしている内にヴィンセントたちは教室に入ってきたし、始業チャイムも鳴ってしまった。



その後も休み時間の度に会議を開くもいいアイディアは思いつかなかった。
それどころかヴィンセントたちがちょくちょくチョコを貰っている姿を何回も目撃するのだった。
しかし、これで挫ける三人娘ではない。
闘いはまだまだこれからなのだ。

「もうさ、この際帰りに渡すのはどう?そんで思い切って告白してさぁ」

言ってユフィはパンを一口齧る。

「冗談と思われないかな〜?」

不安そうな顔をしながらセルフィはいちご牛乳を飲む。

「雰囲気に寄るでしょ〜。冗談じゃない雰囲気作りしなきゃ」

そう言ってコーヒープリンを食べるリュック。

昼休みになって弁当を食べながら会議をするが、勿論ヴィンセントたちはいない。
いたら内容を聞かれてしまう。
まぁ、聞かれるほどのいい案は出ていないが。
三人は今度はいい雰囲気作りの為の策を練り始めたのだが、そこにギップルがやってきて声をかける。

「よっ!難しい顔してどーしたんだ?」
「え、いや、別に・・・」
「究極のプリンの真髄についてちょっと・・・」
「は?究極のプリンの真髄?」

いくらなんでもそれは苦しい言い訳ではないだろうかとリュックは最後の一口を食べながら思った。
けれどギップルはあまり気にしていないような感じで、すぐにリュックの方を向いた。

「リュック、ちょっと付き合ってくんねーか?」
「何に?」
「文化祭出展作品の仕上げ」
「は〜!?まだ終わってなかったの〜!!?」
「へへ、まぁな」
「へへ、じゃないっての」

言いながらもリュックは立ち上がった。
つまりはそういう事である。

「悪ぃな。今度なんか奢ってやるよ」
「コーヒープリン三個ね」
「ちょっ、三個かよ!?」
「嫌ならいいけど?一人で頑張ってね」
「わーかったって!」

リュックとギップルは教室から出て行った。

「リュック・・・チョコ持って行けばいいのに
「ねー、チャンスだったのに」

しかし、その呟きがリュックに届く事はなかった。
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