巻物

□望まぬ情景は絶望に染まる
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「うそ・・・」

ユフィの顔はこの上ないくらい絶望に染まった。

「なん・・・で・・・」

目の前の光景が信じられない。
信じられなくて目を逸らしたいのに逸らせない。

「あ、ああ・・・」

夢であれば覚めてほしい。
けれどもこれは現実。
厳しくて残酷な現実。
ユフィにはどうする事も出来なくてただ叫ぶ事しか出来なかった。

「太ったーーーーーーーーーーー!!!!!」
















「そんな訳で、今日からダイエット始めるから」
「そうか」

ユフィとソファに並んで座って本を読みながらヴィンセントは簡潔に返事をする。
構わずにユフィは続けた。

「お菓子も三時以外は食べないし任務には今まで以上に積極的に参加しなきゃ。
 とりあえず目標は元の体重を取り戻すこと!」
「今のままでも問題はないと思うが」
「問題大有り。肉付くとか有り得ないから」
「だが、見た目はあまり何も変わってないぞ」
「判る人には判っちゃうんだよ、これが」

その判る人はどんだけユフィの事を見ているのだろうか。
女ならまだしも、もしも男だったら何か対策を考えねばならない。
ヴィンセントは本を読むフリをしてそんな事を思った。

そんな事よりもヴィンセントとしては今のままのユフィでも問題はなかった。
むしろ今のままでもいいくらいだ。
しかしそれをユフィに言っても先程のように聞き入れてくれる事はないだろう。
無茶なダイエットをしない限り、あまり止めようとは思わないが、少し意地悪したくなる。
そういう年齢ではないのは重々承知しているが、これはもう止められない。

「そこまで言うのなら止めはしないが無茶なダイエットはするなよ」
「勿論。無茶せずにアタシは頑張るよ!」
「だが、決意を固めた矢先に悪いのだが実はケーキを買ってきてある」
「なっ・・・」
「お前と食べるつもりでいたのだが・・・今日からダイエットを始めるのであれば仕方ないな」

これは狙って買ってあったのではなく、たまたま買ってあったのだ。
でもそれを意地悪の材料に使う。
チラリとユフィの反応を伺えば―――それはそれはもどかしいような悔しそうな顔をしていた。

「〜〜〜〜!!」
「あのケーキは捨てるか」
「も、勿体無いよ!」
「だがお前は今日からダイエットをするのだろう?ならばどうしようもない」
「〜〜〜〜!わ、わかったよ!ダイエットは明日からにする!だからケーキ食べよ!」

作戦成功という事でヴィンセントは内心ニヤリと笑った。
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