oofuri book

□はじまり
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「三橋ーっっっ!!!」
放課後のグラウンドにどなり声が響き渡る。
まぁ、これはよくあることなんだが。
俺がキレやすいというのか、三橋が悪いというのか・・・
(どなるつもりじゃなかったんだけどな)
いつも思う。ホントは優しくしたいのに―と。
アイツを見てるとイライラする。
ビクビクしてばっかだし。
・・・けどそれだけじゃない。

監督に「三橋がほしい」って言ったけど、あれとは違う意味でも、アイツが欲しい。
三橋を俺のものにしたい・・・そんな気持ちが渦巻く。
―好きだ、なんて言ったら、三橋はどう思うんだろうな。
きっといつもみたいにおどおどするだろーな。
それか「俺も好きだよ」って言うのかもな。
俺と違う意味の「好き」だけど。


「三橋」
「ふ・・・ふぁいっ!?」
びくびくした目で俺を見る。
「練習すんぞ」
「う・・・うん!」
今はいいか・・・三橋のそばに入れるだけで。一緒に野球ができるだけで・・・
「あ、阿部くん!!」
「何?」
「もう・・・怒ってないの?」
「最初から怒ってねーっつの」

***
帰り道。
2人だけで誰もいない。
「三橋」
「な、何?阿部くん」
「俺、おまえとバッテリー組めてよかった」
「お・・・俺も!阿部くんと、阿部くんと組めてよかった!!」
やっぱり三橋のキラキラした目を見てるとたまらなくいとしくなる。
「嬉しそうに言うんだな」
軽く頭をなでる。
思わず顔がほころぶ。
「・・・嬉しいんだよ、俺。」
「・・・」
なんて返していいか分からなかった。
気持ちはあふれそうになるばかりなのに。
「三橋」
俺は三橋を抱きしめた。
「あ、阿部く・・・!?」
「俺は三橋が好きだよ」
「おっ、俺も・・・好き、だよ」
「俺の好きはこーゆう意味だよ?」
驚いたような顔をしてる三橋に俺はキスした。
「ん・・・」
三橋から甘い声がもれる。
自分が抑えられなくなる。
「阿部く・・・」
繰り返し繰り返しキスをする。
好きだ。
戸惑いながらも俺をまっすぐに見つめる三橋も
顔を赤らめながら俺に笑いかける三橋も
マウンドにあがってるときの三橋も
全部、全部。
三橋のすべてが欲しい・・・。

ふと我にかえる。
三橋は真赤で、少し苦しそうな顔をしていた。
「悪りぃ。」
「おっ、俺っ、俺もこうゆう意味で、阿部くんのこと・・・阿部くんが・・・好きだよ。」
びっくりした。絶対片思いだと思ってたから。
「離したくねぇ、三橋のこと」
誰にも渡したくない。
俺だけの、俺の三橋。
ぎゅっと強く、強く三橋を抱きしめた。
そんな俺の背中に、そっと三橋も腕を回してきた。
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