□蒼い竜と紅い虎7
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「風が…騒いでるな…」

辺り一面に広がる畑。
そこで一人の男は呟いた。

「…やはり…少し見に行くか」

そう言って、小十郎は立ち上がった。
昔、と言っても最近だが、大事な主に頼まれたことを思い出したからだ。


『オレはこの先死ぬつもりはねえし、死のうとも思わねえ。だが…オレにもしものことがあったら、そんときは…。
お前が幸村を護ってくれ』

主の命令とあらば仕方がない。
どうやら政宗がおかしくなってしまったのは確かなようだ。
それならば、命令どおり幸村を護るしかないだろう。
これまで民のことしか考えていなかった主が、一人の人間を想うようになった。
ある意味、一人の人間としては成長したのであろう。
そういう意味で、幸村には感謝していた。

「…はあ」

小十郎はため息をつきながら、頭につけていた頭巾を取った。


蒼い竜と紅い虎7


「強い…血…」

虚ろな目をし、どこか恍惚とした表情を浮かべる政宗。

「政宗…?」

慶次がそんな政宗を心配そうに見つめる。
元親は、政宗から一歩引いた。
ずっと、喧嘩をしていた元親の体が、本能的に感じたのだろう。

これは、関わってはいけない。

恐怖。
今の元親を支配しているのは、恐らくその言葉だった。
今まであまり恐怖したことがなかった元親だが、今この瞬間政宗を見たことによって、その感情は一気に膨れ上がった。

今までに感じたことのない、恐怖。
元親は、この戦いから逃れることよりも、どうやって慶次をここから逃がすかということを考えた。
喧嘩を好み、戦を嫌う慶次をコイツと戦わせるわけにはいかない。
この、政宗の姿をした化け物を。

「慶次っ!逃げるぞ!!」

「へっ?うわあっ!?」

元親は慶次を強引に引っ張って、自らの愛槍に跨った。
―――慶次を保健室に連れて行こう。
そこには軍神がいる。あとは…くのいちの野郎もいたな。
そうすればオレ一人になるから、そうしたら何とかコイツと戦える。
元親は、追いかけてくる政宗の姿をした化け物を見て心に決めた。

「もっ、元親!?どこまで行くんだよっ!?」

「黙ってろ!舌噛むぞ!」

元親はそう慶次に促し、少し強引なルートで保健室を目指した。
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