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□蒼い竜と紅い虎7
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どれだけ走っていたかわからない。
だが、ここはあまり人目につかないはずだ。
元親は止まり、先程まで爆走するのに使っていた槍を蹴り上げて持ち上げる。
そして、ゆっくりとおかしくなってしまった政宗を見つめた。
「政宗…!」
「…血、血…」
もはや、先程から「血」の一言しかしゃべっていない。
「どうしちまったんだ…!」
昨日まではまだ普通だった。
何故、こんなにおかしくなってしまった。
(何かに洗脳でもされたってのかよ…!)
元親は槍を肩に担ぎ、そんなことを考えた。
しかし、そんなまもなく。
「……っ!!」
政宗の姿をした化け物が、元親に容赦なく襲い掛かった。
元々、戦慣れしている元親にとって、攻撃を弾くなど造作もないことだ。
しかし、相手もまた、戦慣れしている人物。
その鍛え上げられた身体から出る力は、相当なものであった。
しかし、元親はとあることに気づいた。
(…いつもより…動きが鈍くねえか…?)
ほんのコンマ数秒の差。
しかし、それは戦を経験しているものにとっては、相当な長さに値した。
元親はとっととこんな相手を早く済ませようと、大きな網を取り出して、政宗を閉じ込めた。
「…っ!!」
「悪りいな、この網はちっとくらいじゃ切れねえんだよ」
元親は内心ほっとしながら政宗に向かって言い放った。
それでも政宗は諦めることなく、網から逃れようとする。
「離…せ…出せ…。
血…血…血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血っ!!!!!!」
本当に、吐き気がする。
元親は政宗を見て心からそう思った。
(とっとと軍神にまわして治してもらうか…)
元親がそう思って、謙信と親しい先程保健室の放ってきた慶次に電話しようと携帯を開いた。
「長曾我部!」
よく透き通る声が、どこかから聞こえてきた。
「毛利!」
元親がその声をする方を見ると、そこには元就と幸村が元親に寄ってきていた。
「…やったのか?」
「いんや、別に怪我はさせてねえよ」
元親が槍を担ぎながら言った。