□蒼い竜と紅い虎7
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「政宗、殿…」

幸村は変わり果てた恋人を姿を見た。

網から必死に脱出しようともがくその姿は、いつもの政宗からは想像も出来なかった。
そして、いつもは金色に輝いている左目が、今日は。

(紅い…?)

まるで、血の色のように、紅く、紅く、染まっていた気がした。

そして、その目は幸村を見た途端、どこか哀しげに細められた気がした。


「政宗、殿…?」

まだ、政宗としての意識があるのではないか…。

幸村はそう思い、政宗の顔にそっと触れた。
最初は恐る恐る頬にそっと触れるだけ。
だんだん警戒心を解くと、たまに政宗にやるように、右目を覆う眼帯をゆっくり撫でた。


「ユ…キム…ラ…?」

かすれた声で、幸村の名を呼ぶ政宗。
その声は聞き取りにくかったが、しっかりと幸村の耳には聞こえた。

「政宗殿!幸村はここにおり申すっ!!」

「オレ…?」

そう言って自分が何をしていたのかたずねようとしたとき。

殺せ。

「――――っ!!!!!」

殺せ。
殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ。

どんどん政宗の思考がその言葉で支配されていく。

殺したい。
斬りたい。

血が、観たい。

そのためには、どうすればいい?

殺す。
殺す殺す。
殺す殺す殺す。
殺す殺す殺す殺す。

「…政宗殿?」

幸村が政宗の顔を覗き込む。
そのときには、もう、先程までの伊達政宗は存在していなかった。
今、存在しているのは、妖刀に心を乗っ取られた、伊達政宗という姿をした化け物だった。


「幸村っ!離れろっ!!!」

それに気づいた元親が叫ぶ。

「え?」

元親のほうを振り向いた幸村に襲い掛かるのは、化け物。


「幸村ァァァァァァァァァ!!!!」
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