□蒼い竜と紅い虎7
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元親の叫びと共に、その刃は振り下ろされた。

しかし、金属音が幸村の身体を貫く前にさえぎった。

「…?」

幸村は自分の目の前の人物に目を見開いた。
そこにいたのは、大刀…超刀を持つ男。


「前田殿っ……!!」

前田慶次だった。

「慶次っ…!」

元親は慶次の登場にほっとして、息を撫で下ろした。

「前田慶次…いざっ…罷り通る―――っ!!!」

慶次がそう言って、刃を思いっきり振り下ろして政宗をけん制した。
その際に、そこにないのに桜の花びらが何枚か散ったように感じられた。

「政宗っ…!」

慶次がどこか怒っているようだった。
いや、間違いなく怒っている。

「惚れた女は…死んでも護れ!!それが男の役割だ!」

慶次が政宗にそう必死に伝える。

「そんな簡単なことはできないなんて…ましてや好きな奴に刀向けるなんて…」

慶次が少しうつむきながら言う。
きっと昔のことを思い出しているのだろう。
好きな人を護れなかった、己を不甲斐なさを。

「それ以上の野暮は…ないってね!!」

そして、もう一度刀を向ける。

「…愛…?理解…不能…」

すると、政宗が呟くように言った。

「前田慶次、いくら言っても無駄ぞ。そやつは最早伊達ではない。伊達の姿をした化け物だ」

「でもっ…!」

「貴様がいくら説得しようとも、あやつに聞こえることはない…」

「愛…望む…ない…。我…望む…血…」

政宗が、慶次を睨みつける。
その目は、先程よりも紅さが増していた。

「…何だ、これ?」

慶次がそう呟いた。

「愛…形、存在、ない。曖昧、我、認める、しない。
血…形、存在、ある。紅い、綺麗。我、認める。だから、望む」

どうやら、簡単に言うと曖昧なものは認めないと言いたいようだ。

「お前、愛、認める。理解、不能。だから、斬る」

政宗はそう言って、目にも止まらぬ速さで慶次に襲いかかった。

(速ええっ!)

慶次がそう思い、やられるのを覚悟したとき。

茶色い何かが、慶次の前を横切った。
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