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 任務先である砂漠の星から、春雨の母艦に戻ろうと、神夜は船のタラップを仲間達と上る。
 その時に何かの視線を感じ、彼女を足を止めて、辺りを見回す。
 視線の正体は直ぐに見つかった。
 砂漠のど真ん中でぽつんと、食恋族が一人、タラップを上る自分達を見ている。
 食恋族は、見た目は大人しいイメージがあり、イベント会場に放り込めばマスコットのように見える。
 が、その気性は面倒くさいもので、好きな物(者)と一つになろうと、顔にある口ではなく、腹にある大きな口から相手を食べてしまう天人だ。
 相手が逃げようとすると、腹の口から気味の悪い触手を出して捕まえようとし、全宇宙に散らばる女性の天敵と言っても良い。
 食恋族にストーカーされた日には終わりだ、人生が。
 神夜が見ている者に気付いた春雨下っ端部隊の団員は、「気にしない方が良い」と彼女に告げた。

「彼奴等は確かに気持ち良い奴らじゃないですが、こっちから何もしなければ何もしてきませんよ。」

「うん……。」

 立ち止まったままの神夜を追い越し、団員は船の中に入る。
 神夜も暫く食恋族を見た後、タラップを上って船の中に姿を消した。
 タラップが閉まり、エンジン音が辺りに響く。
 砂漠を徐々にスピードを上げて戦艦が進み、離陸する。
 船を見ていた食恋族は、旋回して此方に戻って来る戦艦の尾翼に向けて、腹から触手を放つ。
 触手は尾翼に巻き付き、食恋族が戦艦に引っ張られるように浮き上がる。
 彼は触手を使って尾翼に近付くと、落ちないように触手を尾翼に絡めたまま、尾翼に抱き付く。
 食恋族が尾翼に抱き付いている事など、中に居る神夜達は知る由も無かった。


 ◆  ◆  ◆


「ないッ!ないッ!ないッ!」

「私も無くなってるわッ!」

「どうなってるの!?」

 神夜達が砂漠での任務を終えてから数日後。
 春雨の母艦では、ある事件が多発していた。

「下着泥棒?」

 食事をしながら、むぐむぐと口を動かして、神威が言う。
 目の前に座る阿伏兎も、食事のカレーを口に運びながら、頷いた。

「最近よー、お姉様方の下着が洗濯中に無くなってるんだと。被害者数が毎日のように増加してるから、上が調べてくれだってさ。」

 面倒くさそうに阿伏兎は言い、神威は不満げな表情をした。

「何で俺達が?そういうのは神夜達の仕事だろ?」

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