book1

□知らないわ、そんなキノコ
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あ、今日も、また。

アリスは二階の窓の向こうを見つめ、そう思った。

最近、家の近くを魔理沙がよく通る。
いつも窓の外を眺めている訳ではないが、黄金色の髪をなびかせて飛ぶ魔理沙の姿が、近頃小まめに塗り変えられていく。
そしてその姿は、大概行きと帰りの往復で1セットなのだ。
さぁっとやって来たかと思えば、さほど時間も経たない内にまたどこかへと飛び去ってしまう。
初めの内は特に気にしなかったが、回数を重ねるにつれ、一体私の家の近くまで何をしに来てるんだろう、と気になるようになった。
そうしてついに好奇心が抑えきれなくなった今日、私は魔理沙の後をついて行くことにした。

魔理沙にバレない様にある程度距離を保たなくては、と考えるや否や、魔理沙が家の庭先にふわりと降り立った。
突然の追跡完了に、アリスは拍子抜けしてしまう。
一体私の庭に何の用が・・・?

その庭はアリスにとって広い敷地内の一つ、といった認識でしかない。
土の質があまり良くなく特に手入れもしていないので、野生の草花が自由に生え、どちらかというと空き地の雰囲気に近い。
なんの面白みのない場所に魔理沙がいることへの好奇心は、ますます膨れ上がっていった。

「ちょっと、魔理沙!何これ!」
「うわっ!」

背後からのアリスの大声に魔理沙は驚き、体が少し跳ね上がった。

「何だよ、アリス。驚かさないでくれよ。」
「驚いてるのはこっちよ!何なのこの大量のキノコ!」

アリスが見たのは、控えめな草花しかなかった庭一面に現れたキノコたちだった。

「あーバレちまったか。」
「もう!人の庭に勝手にキノコ植えるなんて信じられない!」
「悪い。つい、な。」
「早くどうにかして頂戴!」

ぷりぷりと怒るアリスを刺激しない様に、魔理沙は言った。

「すまん。でも次の満月まで待ってくれないか?頼むよ、アリス。」

両手を合わせてお願いする魔理沙に、アリスの怒りはぐらつく。
でもそれは悟られない様に装い、満月の夜までなら、ということで約束をした。

「ありがとなアリス!じゃ、また!」

約束をすると、魔理沙は庭を去った。
そしてアリスは庭に目をやる。
私はやっぱり、魔理沙に甘い。
ため息を一つだけ漏らした後、満月の夜には、庭一面に広がるキノコたちを何が何でも片付けてもらおうと堅く、決意した
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