book1

□花に例える
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カチャリと、フォークが皿に当たる音が鳴った。
お預けされたティータイムで食べるケーキは一段とおいしい。
魔理沙は口の中に広がるふんわりと軽い甘さを十分に味わっていた。

「やっぱりアリスのケーキはうまいな。」
「・・・ありがとう。」
「いつでも作り過ぎてくれて構わないからな!」

眩しく笑う魔理沙に心臓がぎくりとする。
そう、そもそも魔理沙を家に招いたのは「ケーキを作り過ぎてしまった」という理由があったからなのだ。
しかしそれは分量をきちんと守ったアリスの口実である。
次は気を付けるわ、という台詞はアリスにそらぞらしく響いた。

「あーうまかった。」

魔理沙は椅子に寄り掛かり、だらんとくつろいだ様子で言う。
そうして紅茶を飲んでのんびりしていると、ふと、魔理沙がアリスに問いかけた。

「ところでさっきアリスが差したこれは何の花だ?」
「何の花だったかしら。んー、でも確か雑草よ。」
「雑草かよ。」

飾り付けられた花の正体が雑草と聞いて、魔理沙は少しがっかりした。

「でもどんなに日の光が弱くても、雨が少なくても、力強く花を咲かせる私の大好きな花よ。」
「・・・そうか。」

そこで、数秒沈黙が訪れる。
程なくして魔理沙は勢いよく立ち上がった。

「じゃ、私はそろそろ帰るぜ!ケーキうまかった、ありがとな、アリス!」
「ううん、こちらこそ来てくれてありがとう。」

玄関先まで見送りに行くと、魔理沙がほうきに跨りふわりと浮いた。

「じゃ、アリス、またな。」
「ええ、またね。」

その一言が言い終わると同時に、魔理沙は空へと飛び去ってしまった。
アリスはその後ろ姿をしばらく見つめ、見えなくなったところで家の中へと戻っていった。
一方、魔理沙は空を飛びながらぼんやりと、先程アリスの言った言葉を考えていた。

全く、突然大好きとか言うなよな。

もちろんアリスは花のことについて言ったのであるが、対象物が限りなく自分に近い時に言われたものだから、魔理沙の頬が勝手に色付いてしまった。
そして、みつあみに意識を向ければ、ちょこんと咲いた花が風に揺れていた。

どうか落ちてくれるなよ、と一人思い、魔理沙は花をみつあみの奥深くに差し込んだ。
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