book1

□揺れ動く暗闇
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 暗闇の中で考えたこと。
 暗闇の中で、何を見た? 





 闇を纏い、ふよふよと漂っていると意識せずとも色んなものに気付かされる。
 時には障害物とか、やっぱり障害物とか。


 ある日勢い良く木にぶつかり、トゲトゲのボールみたいなものが降りかかってきたことがあった。
 木にぶつかることはこれまでもあったが、こんな攻撃を仕掛けられたのは初めてのことである。
 また攻撃されたらたまったもんじゃない、と足早にその場を去ろうとしたら、今度は地面からサクリと攻撃され、泣きそうになった。
 そしてトゲトゲへの恐怖が薄れた頃に、それを「おやつ」として博麗の巫女に渡された時はまた泣きそうになった。



*****

「あぁ、ちょうどいいわ。ルーミア! 」

 博麗の巫女に呼ばれ、あぁ、自分は博麗神社まで来たのかということに気付いた。
 そして私は声の元へと近づく。

「なーに? 」
「あんたにもらって欲しいものがあるんだけど。ちょっと待っててくれない? 」
「うん。いいよー」

 ぱたぱたと遠ざかる足音をBGMに、柔らかな月明かりの神社をぼんやりと見ながら、霊夢を待った。
 すると次第に足音はまた大きくなってきた。

「うちの神社でとれたんだけど、食べきれないからおやつにでもどーぞ。ま、人間食べる前にこれで腹でも満たしなさいってことね」

 そう言うと、霊夢はトゲトゲいっぱいのざるを突き出した。
 思わぬ再会に、あの日の恐怖が頭をなでる。

「これ、痛いから嫌い。口の中血だらけになっちゃうよ」
「……あんたまさかこのまま食べると思ってるの? 」

 すると突然霊夢は笑い出した。
 こんな怖い思いをしたものを私に見せて笑うなんてひどい。
 何だか少し泣きそうになっていたら、霊夢が恐怖の物体を足下に落としたので思わず私はびくついてしまった。

「はい、ルーミア。これはこうやって中身を出した後に食べるのよ」

 その後いじわるされることもなく、霊夢はくり?の食べ方と称してトゲトゲ解体ショーを始めた。
 霊夢の手にかかれば、トゲトゲも大人しくて、最後にはころんと丸みのある茶色いものが出てきた。
 それに感心していたら、霊夢が新たに持ってきた、これを茹でたものの中にはホクホクとした甘い食べ物が隠れていたのだから、私には驚きだった。


 この「栗」という食べ物は、秋にしか食べられなくて、今がちょうど実りの時期なのだそうだ。
 こんなトゲトゲが食べ物だったなんて全然分からなかった。
 同時に、二重の装備を剥がしてまで食に辿り着こうとする人間ってすごいな、と思ったことを私は覚えている。
 すぐに取って食べられるものを食べればいいのに。
 そのへんはよく分からないけれど、確かに栗はおいしいなぁ、と思いながら博麗神社の帰り道、湖に寄ってチルノちゃんに会いに行った。
 そこで一緒に食べよ? とチルノちゃんにお土産の栗を見せた。
 何これ食べ物なの?と興味津々に見つめてくるチルノちゃん。
 霊夢がくれたおいしい食べ物だよ、というとにぱっと顔を輝かせた。
 それに対し、良く分からないくすぐったさを覚える。


「ルーミア、これおいしいね! 」
「うん。栗っていう食べ物なんだって」
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