book1

□揺れ動く暗闇
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 闇を纏い、ふよふよと漂っていると意識せずとも色んなものに気付かされる。
 時には音声とか、やっぱり音声とか。
 特にお腹のすいてない時に聞く人間の話し声は、結構面白かったりする。
 

 遠くから、人間の子供の声が聞こえてきた。
 人数は10人くらいだろうか。
 少しだけ耳を傾けてみる。

「だーるーまーさーんーが、転んだっ!」

 その言葉を合図に一斉に足音が鳴り止む。

「だーるーまーさーんーが……」

 同時にわっと駆ける音が鳴り始めて、

「転んだっ!」

 また、ぴたりと音が止んだ。

 その後、何人かの子供の名前が呼ばれ、次にかの台詞を聞いたときには足音は少なくなっていた。
 ひたすら同じ言葉を繰り返した後に、一人消え、また一人消え。
 この中にはきっと呪術を使える子供がいる。
 そのまま闇の中で恐怖を隠しながら様子を伺っていると突然、大きな笑い声が響き、きゃーとか、わーとか言いながら、子供たちは何かから逃げ出した。
 しばらくすると、今度は違う子供の声で一定のリズムの繰り返しが始まった。
 性懲りもなく、と思ったが実は最後には笑いに包まれる意外と楽しい呪いなのかもしれない。
 一つの仮定に辿り着くと、そうだ、チルノちゃんに会いに行こう、と足は自然に湖へと向かった。

「チールーノちゃーん」
「あっ、ルーミア!どーしたのさ? 」
「だーるーまーさーんーがー……」
「んん? 」
「転んだっ! 」

 チルノちゃんは固まった。
 それを見て、私は呪いの効果に期待を寄せる。
 しかしそれは虚しく、

「……何なのそれ? 」

 というチルノちゃんの一声で泡となって消えるのだった。

「よく分からないけどさ、まぁゆっくりしてけば? 」
「うん。ありがとー」
「ルーミアって、たまに意味分からないこと言ったりするよね」

 人間にしか使えない呪いがあることに私はがっかりしながらも、チルノちゃんはいつも通り笑ってくれたので、まぁいいか、と思うことにした。
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