短編
□変化
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獄寺君と恋人という間柄になって早三年が経とうとしている。
俺らは同じ高校に進学して、また同じクラスになって、毎日一緒にいる。
それは中学の時から変わらない生活を送っていた。
だけど、最近何かが変わっている。
「十代目、今日は何処に行きますか?」
「う、うん。そうだね、商店街でも行こうか。」
俺らは二人で商店街を歩く。
デートはほぼ毎日のようにしていて、一緒にいる時間は幸せだった。
だけど、最近やっぱり何か変わっている。
「何か食べますか?」
「お腹空いてないから大丈夫だよ。」
「そうッスか。何か今日人多いですね。果たしてきましょうか?」
「…行かなくていいから。」
そう。獄寺君は何かと俺に聞いてくる。
必ずと言っていいほど語尾にハテナがついている。
「…十代目なんだか機嫌が悪いですか?」
「何でもないよ。」
俺が笑顔で答えると、獄寺君は俺の心の声を聞き取ってはくれない。
言わない俺が悪いし、わがままだって分かるんだけど、昔なら少しの変化にも気づいてくれていた筈なのに。
「−−−−」
獄寺君の言葉が耳に入り抜けていく。
変わってしまったのは彼?
変わってしまったのは俺…?
「ねぇ、獄寺君。」
「はい、何ッスか十代目!」
話の最中に割って入ったのにも関わらず、彼は笑顔で俺の方へ体を向けた。
「獄寺君、変わったよね。」
「…え?」
わがままを言いたくない。
嫌われたくない。
「なん…か、さ。」
でももう止まらなかった。
「昔は、〜行きましょうとか、〜しましょうとか。俺を引っ張ってくれたのに、最近は聞くばかりじゃん。
俺は獄寺君が行きたい所に行きたい。したい事がしたい。
毎日聞かれる俺の身にもなってよ。
昔の獄寺君は何処に行ったの?
どうして変わってしまったの?
これって俺のわがままかな。」
言葉と共に目からは涙が溢れ出ていた。
言葉は止まっても涙だけは止め処なく流れていった。
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