短編
□sweet melt
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もうすぐ恋人達のイベント、バレンタインだ。
街はピンク一色に染まり、ハートのオブジェが軒並み並んでいる。
デパートにはバレンタインの特設コーナーがあり、女の子達が好きな人や友達へあげる為一生懸命選んでいる。
そんな中、綱吉は居た。
「……。」
恋人である雲雀にチョコレートをあげようと思いやってきたのだ。
イベントなんて気にしない彼だと思っていて、クリスマスに何も用意してなかったら酷い目にあったのは未だに鮮明。
あの日は腰が砕ける程お仕置きをされたっけ。
だからバレンタインも用意しておかないと怒られると思い、デパートの特設コーナーにやってきたのだが…
(無理、無理無理…っ!)
その場には女の子しか居なく、店員も皆女性だ。
そんな中男の綱吉は酷く浮いていた。
元々女の子のような顔はしているが、それは「男にしては」の場合だけ。
このように女の子と比べれば一目瞭然だ。
通り過ぎる人が皆、綱吉を不思議そうな顔で見ていた。
「あの子…逆チョコするのかな?」
そういう会話が聞こえ、チラリとそちらを見ると、クスクスと笑われた。
多分微笑ましいといった笑いだったと思うが、この状況で笑われた綱吉にとっては馬鹿にされているとしか思えない。
顔を真っ赤にした綱吉は恥ずかしくて穴があったら入りたい、と思った。
もう帰ろう、雲雀さんには謝ろうとつま先を出口へ向け歩きだした時、二人の可愛らしい女の子の声がした。
「やっぱりバレンタインは手作りだよね!」
「売ってるのは形も綺麗だし、美味しそうだけど…手作りだと愛が籠ってるよね。」
きゃっきゃと可愛らしい女の子は、既に作られているチョコレートの前ではなく板チョコの前に居た。
思えば手作りコーナーの方が広く設けられており、そこへ群がる女の子も多い。
(そうだ…俺も板チョコなら買える!)
作られているチョコレートは買うのには凄く抵抗があったが、普通の板チョコだったら変に思われないだろう。
そう考えた綱吉は特設コーナーを出て、普通のお菓子コーナーで板チョコを購入した。
それだけ買うのはやっぱり変に思われるかもしれないから、スナック菓子も一緒に買った。
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