長編側にいたい

□Two Hearts
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突然のことで宙ぶらりんになっていた腕を彼の背中に回した。
自分よりも男らしい広い背中。

「何を…言ってるんですか。当り前です。」

これからもずっと側にいたいと思うのはこちらだって同じだ。
それが永遠に続けばいいと、そう思う。
男同士だけど、まだまだ子供な俺達だけれど。
反対の声が上がっても曲がる気は無い。
ダメツナだけど、一度決めたら決意は強い方だと思う。

「ねぇ。」

一つになっていた心が離れて二つになってしまった。
だけど、一瞬一緒になった細胞が細胞分裂してしまっただけなのだ。
だから何も変わらない。気持ちは通じあったままだ。
つなよし、と彼の唇と声が俺を呼ぶ。

「キス、してもいい?」

ボン、と急に顔が赤くなったのが自分でも分かった。
そんな聞かれても困ってしまう。
久々だからどうやってキスをしていたのか思い出せない。
明らかに動揺している俺を見て、彼は喉の奥でクツリと笑った。
なんだか…彼の笑顔を久しぶりに見た気がする。
家に帰った時もよりも更にほっと胸が安心した。

「ねぇ、どうなの?」

「ずるい…です。」

そんな愛しそうに見つめられて断る理由なんてない。
それにキスは凄くしたい。
でもやっぱり恥ずかしい。
ふと、気が付き周りを見渡した。
自分たちの世界に入っていたが、ここは公園で周りには沢山の人達がいるのだ。
抱き合っている二人をベンチに座っているカップルがひそひそと話しながらこちらを見ている。
急に恥ずかしくなり、彼の肩を押した。

「また、今度でもいいですか…?」

彼も気付いたのか、周りを一通り見渡した後、ああと言い少し距離を取ってくれた。
離れてくれて恥ずかしさは無くなり、すると次には寂しさに襲われる。
目の前にいるのに、手が届く距離に居るのに、寂しいだなんて自分はどうかしてしまったのだろうか。
体が彼の温もりを再び求め、そっと手を伸ばしていた。
行きつく先は彼の温かい手。

「ヒバリさん。」

一つ、彼の名を呼んだ。
真剣な眼差しで見つめると、彼もそれに応えるよう真剣に見つめてくれる。
目の中は柔らかい瞳。

「おれ、強くなります。いつまで経ってもこのままじゃ迷惑をかけてしまう。ヒバリさんみたいに強くなれるとは思えないけど…自分を守れるくらいになりたい。」

何をやってもダメで弱い自分だから、今回こんな風になってしまったんだ。
いつまでも守られてばかりじゃ駄目だ。強くならなきゃ。
繋がれている手がぎゅっと強く握り返された。

「うん。」

空いている手が優しく頭を撫でてくれた。
監禁されている時と同じ、優しい愛しい大好きな手。
彼の気持ちは何も言わなくても伝わってくる。だから此方も何も言わない。
心の中だけで唱えよう。

――『大好き』だということを。

ここ数カ月で二人の間には様々なことが起こった。
彼と体を繋げ愛し合ったこと、監禁されたこと、それが守るためだったこと。
色々あったけれど、最初から最後まで二人は互いに想い、信じ続けた。
その結果今、となりに愛しい姿がある。
側にいたいと、願える人がとなりに。


第二章 となり
Two Hearts 完結


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