長編側にいたい

□Two Hearts
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「俺…っ、ヒバリさんに酷い事を、言いました。」

声が少し震えて、泣きそうになったが何とか耐えた。
ちゃんと伝えたい。
彼と付き合う時に幸せだから、泣かないと決めたのだ。
だから、だから。

「綱吉…」

俺の目の高さに合うように屈んでくれている彼の姿がぼやけて見える。
ぼんやり見えるのは悲しそうな表情。
泣かないと決めたのに、どうして泣いてしまうんだろう。
なんて弱虫なんだろう。
それでも彼は何度も親指の腹で涙を拭ってくれた。

「嫌いとか…うそ、です。ぜんぜんうそ…っほんとは好きで、好きでたまら…」

「守ってあげられなくて、ごめん。」

彼は親指にある傷と俺の頬にある傷を重ね、切なそうに謝った。
どうして謝ることがあるんだろう。
ちゃんと俺がここにいるのは彼が守ってくれたからなのに。

「まだまだ僕は弱くて綱吉を守れる程強くなくて。だから離れようと思った。」

「ど、うして…?」

どうして一緒にいちゃ駄目なのか分からなかった。
彼が何故そんな考えに辿りついたのかもさえ。
でも傷だらけの彼を見ると、きっとプライドが傷つけられたんだと分かった。
一番強いと思っていたのに、手ごわい相手が出てきて叶わなかった。
だから姿を隠し、強くなろうとしたのだろう。

「けど…」

涙を拭いていた手が背中に回り、ぎゅっと抱き寄せられた。
久しぶりに彼の温もりを感じた気がする。
凛とした香りも本当に久しぶりで。
胸と胸が近づき溶け合い、鼓動は同じようにトクントクンと響いている。
まるで二つの心が一緒になったかのように。

「願ってしまった。」

彼の声がすぐ横で聞こえる。
相変わらず鼓動は同じで、頭の中では細胞と細胞が一緒になった瞬間の映像が浮かんだ。
きっと、彼と俺の心はもう一緒になったんだと思った。
彼が更に強く俺の体を抱きしめた。

「綱吉と一緒にいたいと。となりに居たいと。…側にいたいと、願ってしまった。」

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