長編側にいたい

□真っ白
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目を瞑れば学ランを纏った彼の後ろ姿が浮かぶ。
結局、彼は俺のことを助けてくれたのだろうか?
それともただ攻撃したかっただけだろうか?
それなら何故俺は対象にはならなったのだろう。
疑問の言葉は頭の中をぐるぐる回っていた。

もし、あの時助けてくれたのだったら

「お礼、言いたかったな。」

みんなが寝静まる夜に、言葉は部屋にポツリと響いた。



「あーもう!」

そういえば今日は中学校の入学式で、昨日出来事が印象強くそんな事はすっかり忘れてしまっていた。
母さんに、どうして起こしてくれなかったのかと問うと、もう中学生なんだからしっかりしなさいと怒られた。
そりゃ中学生になると映画の料金とか、銭湯のお金もランクが上がるけど、一日で大人になれる訳じゃない。

「起こしてくれたってよかったじゃんか!」

バタンと扉を閉めて、全速力で走った。
小学校では私服だった為、制服が走りにくいし、靴もローファーに変わったため、元々遅い俺の足を更に遅くさせた。

「くっそ、」

もう走っても間に合わない時間だった。
せめて先生に会った時に、走って来ました感をだそうかと思ったが、諦めた。
怒られることには変わりはないだろうから。
とぼとぼ歩いていると、中学の門が見えてきて、そのままのスピートでとぼとぼ門をくぐるった。
すると、後から声が聞こえた。

「何してるの。」

あの、声だった。
セリフもトーンも全く同じのあの、声だ。

「え…」

声がする方を見れば、俺が通り過ぎた門に背中を預け腕組みしている、彼の姿が目に入った。
細い切れ目に漆黒の瞳、日本人特有の黒の髪に、スラっとした体格。

間違いない。彼だ。

「何してるのって聞いてるの。」

「えっと…あの、寝坊してしまって。」

「へぇ」

そのまま彼はジャリジャリと音を立てて俺に近づいてきた。
あの時は見えなかったが、腕に風紀の文字を纏ったものがぶら下がっていた。

風紀、何だそれ。

その文字の意味を理解している内に二人の距離は縮まる。
俺がハッと我に返った時には、もう彼は目の前にいた。

「風紀を乱したね。君はここで咬み殺してあげる。」

「え、」

口を開いた時にはもう遅かった。
懐からあの武器を取り出して、俺の頭をガツンと殴ったかと思うと、そこで意識を失った。

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