長編側にいたい

□淡い桃色
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「沢田綱吉。放課後応接室に来ること。以上。」

授業中にイキナリ響いた校内放送。
その声はリーゼントの風紀副委員長の草壁さんの声だった。
奴隷になって初めての呼び出しに、俺は少し恐怖を感じたが、周りは面白おかしく笑う。
そしてまたしても、先生は見て見ぬフリだ。

「沢田、とうとうお呼び出しだな!」

あはは、ゲラゲラ。
下品な笑い声が授業中なのに、教室に響いた。
と、その時に授業の終了を知らせる合図が鳴った。

(よし、応接室に行こう。)

こんな場所より彼の所に行ったほうが安全だと、脳が察知して、足を踏み出した。
だが立ち上がった瞬間、隣に居た男子に腕を掴まれた。

「い…った」

「なーなーみんな、こいつが契約を破ったら処罰が下るんだったよな?」

その腕を掴む力は酷く強くて、元々体自体大きくない俺の力では振り切れないほどだった。

「じゃあさ、もしさっきの呼び出しを無視したら、こいつどうなるんだろうな?」

その男はキツく握った腕を更に握ってきた。
表情は何かを企んでいる不吉な笑顔だった。

「な…に言って…」

「みんなでこいつ体育倉庫に隠そうぜ!」

その声を筆頭にクラスの男子が俺を抱え、体育倉庫へと運び出した。
先生や女子はただ見ているだけで、助けようともしない。
…それよりも、俺は雲雀さんの所に行かないと大変な事になってしまう。

「やめてよ、離せ…っ」

「うるせぇよ。」

必死にもがくも、クラスの男子約15人には敵う訳なんてなくて。
気がつけば目の前には体育館が見えた。
本気でヤバイ。閉じ込められる。
暗所恐怖症でもないし、閉所恐怖症でもないけれど、閉じ込められるなんて嫌に決まってる。

「やだ、やだ!」

抵抗も空しく、ガシャンと分厚い扉に閉じ込められてしまった。
どこから取ってきたのか、鍵まで丁寧に閉められ、もうどうすることも出来ない。

「おい沢田。雲雀さんが探してたら伝えてやるよ、帰りましたってな!」

あははとまた笑い声が届いた。
そしてその声はだんだんと遠くなっていった。

本当にどうしようか。
携帯電話なんて持ってないし、外に通じるものもない。
小さな小窓はあるが、鉄格子があるためそこから抜け出すことも出来ない。
ここから出られないとしても、せめて雲雀さんにここにいると言うことだけでも伝えたいが、そんなことは叶うハズがなかった。

「本当…どうしよう。」

馬鹿な俺だから、ここからどうやって脱出しようかなんて閃きもしなかった。
と、その時外から悲鳴や叫び声が聞こえた。
よく耳をすまして聞いていると、その声は先ほど俺をここに閉じ込めたクラスの男子達の声だ。

その叫びが止んでしばらくすると、ガチャガチャと鍵が開く音がして、次には分厚い扉が開かれた。
逆光で眩しくて、目を思わず細めた。
すると目の前には一人の黒い人影が。

「…ヒ、バリさん?」

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