長編側にいたい

□赤い涙
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雲雀さんに借りてた(正確には勝手に持って帰った)学ランを渡し、走っては行けない廊下をフルダッシュした。
きっとまた顔が赤く熱いのだろう。
丁度廊下に備え付けられている鏡を見れば、ああやっぱり。
真っ直ぐ彼を見ることなんて出来なくて、つま先しか見てなかったのにこんなに赤いとは。

「はぁ…。馬鹿だ、俺。」

多分(いや絶対)彼にとって俺はただの奴隷としての人形で、感情なんてこれっぽちも期待は出来ないのに、どうして彼にベクトルが向いてしまったのだろう。
町内で恐れられる彼は恋愛の対象なんてしてはならないし、ましてや同性。
初恋は甘いなんて誰が言っただろうか。

「俺にとっちゃ、唐辛子よりも辛いよ…」

トボトボ歩きながら教室へ入ると、早朝に来たせいか、まだ誰もいない。
こんな風景多分彼と出会っていなかったら、一生見れなかっただろうな。
窓側の自分の席へ座ると机に体を預けた。
早起きをしたから、瞼を閉じると自然と意識は夢の中へ落ちた。


ざわざわと教室が騒ぎ始め、ううんと唸りながらゆっくり起きた。
俺が目覚めると、目の前には昨日俺を体育倉庫に閉じ込めた彼らがズラリと立っていた。
まずい、また何かされる。
怯えた目で彼らを見ると、俺以上に彼らは怯えた表情をしていた。

「え…あ、の」

「沢田、ごめん。」

ごめん、ごめんと彼方此方から声が上がる。
彼らの体には痣や傷があって、そういえば昨日彼らは雲雀さんに手によって倒されたのだったと、脳が認識する。
だけど、謝られる理由が分からない。
雲雀さんに倒された腹いせに、俺はぎたんぎたんにされると怯えていたのに。

「もう、お前には手出しはしない…怖いから。」

「俺も。」

また彼方此方から、俺も俺もと声が上がった。
彼が言った怖いという言葉は、俺へじゃなく雲雀さんへの言葉だろう。
俺に手を出せば、雲雀さんにまたやられると思っているんだ。
でも本当は、彼らを倒した理由はただ群れてたからっていう彼の気まぐれなんだけれど。
だけど、それは口には出さなかった。

「う、うん」

これでイジメは無くなった。
それもなんだかんだ彼のおかげじゃないかな、なんて思っちゃったりもした。

数日経つと、クラスではダメツナと呼ばれるも、イジメはすっかり形もなく毎日が楽しかった。
そんなある日、家に帰ると小さな家庭教師が俺の目の前に現れた。

「お前を俺の手で立派なボンゴレ十代目にしてやるゾ。」

その言葉と共に、今までの生活が一変した。
もちろん雲雀さんとの関係も変わってしまったんだ。

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