長編側にいたい

□そしてクリアに
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病院に着くと院内はざわめいた。
あの、雲雀恭弥が一人の人間を横抱きに抱えてやってきたのだから。
周りの人間は怯えて避ける。
重症患者や車イスの人は素早く動けない為、そのまま立ち尽くしたままだが、目を合わせないように視線を下ろしている。
だが珍しくそんな者には目もくれず、雲雀がずんずんと進んだ先は院長室だった。

もちろんノックなどせずバタンと開ければ、書類整理をしていた院長が居た。

「なっ…ひ、雲雀君!!ど、どうされたのですか…?」

「この子、診察しなよ。」

近くにあったソファーに彼をそっと置いて院長をじっと見据えた。
冷や汗をかきながら雲雀が置いた少年を覗き込む。
呼吸は安定しているし、特に何もないようだが、雲雀が言うのだ。
精密検査もして人間ドックもしてそれから…

「少々時間がかかりますが…」

「じゃあ終わったら呼んでよ。」

そう行って何故か雲雀自身早くして、と催促もすることもなく去って行った。


僕が院長室の外に出ると、草壁が立っていた。
眉を下げ何やら申し訳ないような表情をしたまま。

「委員長、あの少年ですが…逃げられたようで。」

ああ、その件についてか。と興味がないように返答した。
確かにあの少年は何か闇を持っていて、僕でさえ恐怖を感じた。
そんな経験初めてで、その少年については興味を大きく惹かれたが、別に並盛の生徒なのだ。
いつでも会うことが出来るし、尋問なども容易いだろう。

「もう構わないよ。君のせいでもないしね。」

「本当にすみません。あと沢田の件ですが…大丈夫でしたか?」

「まだ時間が掛かると言われたから、僕は部屋を借りて睡眠でも取ってる。」

実際彼の体が心配で寝れそうにはないのだが。
僕は部屋へと一歩踏み出した時、あの、と草壁がもう一声上げた。

「それと委員長…その…先日は失礼しました。」

何を、なんて聞かなくても分かってる。
僕に反抗したこと、それに僕に手を下したことだろう。

「…僕も、悪かった。」

ああこれで謝罪の言葉も人生で二度目だ。
僕からの意外な言葉に草壁は目も口も開けて、なんとも間抜けな表情をしている。
その顔に少し腹が立って、ムスッとしていると草壁は慌ててガバリと大きくお辞儀をした。

「では、仲直りですね。」

「君と仲良くするつもりは無いんだけど。」

そうすると草壁はまた慌ててお辞儀をした。
変な奴、なんて思いながらも心はなんだかくすぐったくって。
この感情は彼が真っ赤になって応接室から出て行った時を見送ったときのような、そんな感じ。
僕の知らない感情。

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