長編側にいたい

□痣浮かぶ足首
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目を開けると暗闇だった。
綱吉はまるで自分が目を開けているようで開けていないのかと思い、瞼を手で触れるが、目はちゃんと開いている。
背中にあたるのはフカフカな感触。
目の前を手で探ってみるが、何も触れることはない。
触れて分かったのは、背中に感じる物は布だということ。
気温も少し冷たくて、長袖のフード付きパーカーでは肌寒いと感じるほどだ。

暗闇の中にいるのは一人、綱吉だけだった。

「なん…で、?」

どうしてここにいるのか綱吉自身も分かっていなかった。
つい数時間前の事の遡る。


リボーンに麻酔弾を打たれて目を覚ますと、夕食の用意が出来たという母親の声。
ベットサイドで騒ぎだすチビ達、とリボーン。
雲雀さんはどこへ行ったのかと聞いたが、帰ったと一言だけ告げられた。
どうして麻酔弾なんて打ったんだ、とかあの攻撃は誰からなのか、とか雲雀さんの怪我は大丈夫なのか、とか色々聞いたけど、その質問には一切答えてくれない。
夕食の時は母さんも一緒だったから聞けず、食べ終わるとリボーンはすぐに寝てしまったから、聞くことすら出来なかった。

翌日になってもう一度聞こうと思ったのに、肝心な時に居ない。
それよりも彼の安否が気になって少し早く家を出て、走って学校へ向けっていた矢先だった。
背後に気配を感じて振り返ろうとすると、目の前には後から伸びた手と白いハンカチが。
気付いた時にはもう遅かった。
白いハンカチは俺の口元を覆い、そこから漂うきつい薬の匂いにマズイと思って息を止めたが、それは持って数十秒。
呼吸を我慢出来ず息を吸った俺は、脳内がくらくらとして目の前が歪んだ。
そして気がつけば、今この状況だというのだ。

綱吉はゆっくり上体を起こした。
目を開けてから随分経ったおかげか、ぼんやりと周りの景色が見えるようになってきた。
そして綱吉が横たわっていたのはふかふかのベットという事が分かる。
ベットから起き上がって丁度前には大きなテレビ、その少し横にはキッチンがあり、生活が出来る一通りのものが揃ってある。
まるでマンションのモデルルームの一角のような場所。

「…あれ?」

一見すると普通なのだが、何か違和感を感じる。
その何かが分からないが、普通の部屋とは一つ違うものだ。

外から鳥の鳴き声が聞こえた。
チュンチュン、と雀だろうか、仲良く二匹鳴いている。

「あ…」

その鳥の声がする方へ目を動かした時に気付いた、違和感。
…この部屋には、

「窓が…ない。」

当り前にあるはずの窓が全てないのだ。
一つ直径五センチくらいの小さな通気口があるだけで、ここが外から通じるものがない。
だからこんなにも暗いのだ。
だからこんなにも暗闇を作り出しているのだ。

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