長編側にいたい

□痣浮かぶ足首
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薬が残っているせいか、脳はまだぐらりとするが綱吉は逃げなきゃと思い立ち上がった。

「…!!」

ベットから足を下ろした時、シャランと金属製の音が鳴る。
暗闇の静かな中その音は酷く響き、思わず綱吉は肩をビクリと揺らした。
その音がする方へ視線を落とすと、言葉を失うほど綱吉は驚愕した。

「う…そ、何で…」

綱吉の足首には冷たくて重い足枷がしてあったのだ。
どうして気付かなかったんだと不思議に思うほど、重い重い足枷。
手で外そうと試みるも、分厚くて堅い金属製のソレは人の手ではどうしようもなかった。
足枷には鎖が付いてあり、その鎖は部屋の中心の机の足に繋がっていた。
そのおかげで部屋の中は自由に動けるようになっている。
目が慣れたといっても完全に光を遮断している部屋だから、手探りでこの鎖を切れるものを探した。
ハサミ、包丁、ペンチ…なんでもいい。
早く、早く外して逃げなきゃ。
綱吉は必死になって探したが、見つかることはない。

それは当り前だろう。
もし自分が監禁する犯人だとしたらそんな物は部屋に置いたりしない。

「く…っそ!」

どうにも出来ない自分が嫌になり、近くにあった本を壁へ向かって投げた。
一番堅い所が当たったのか、ゴンと鈍い音を立てた本は役割を果たし、ずるずると床へ落ちていく。
イライラして何度も何度もその行為を繰り返す。
壁は何度も鳴き、本も何度も鈍い音を発した。

「ヒバリさん…ひば…っ」

こういう時、いつも助けてくれる彼を求めた。

「ひばりさん!!」

大きな声で助けてと叫んだ。
この部屋は防音設備も整っているのか、綱吉の大きな声は跳ね返って綱吉の耳へと戻ってくる。
耳がキーンと痛くなるが、何度も叫んだ。
そうすれば彼は助けてくれるような気がしたから。

すると、ガチャガチャと散々本をぶつけたドアの向こう側から音がする。
カチャン、と鍵が開いた音がした。
どうやら綱吉が攻撃していた壁だと思っていた場所はドアだったらしく、そこがゆっくり開かれる。
まずい、そう思った綱吉はベットの布団へと体を埋めた。
意味は無いのは分かっていたが、どうにもその犯人から逃げたかったのだ。

「…」

犯人は無言で綱吉に視線を落とす。
暫く見つめた後、備えつけのキッチンへと移動し、ガサゴソと袋のような物の音を立てていた。
綱吉はゆっくり気付かれないように布団の中から目を出し、犯人の顔を見ようとしていた。

「…え!」

布団をがばりと剥ぎ、大きく起き上がった。
キッチンにいる人物は見覚えがある。
綱吉の大きな反応に気付いた犯人は袋に入っている人参やらじゃがいもなどを冷蔵庫に入れている手を止め、綱吉を見つめた。

「な…んで?…どうして。」

犯人はニヤリと笑いながら、綱吉へと一歩一歩足を近づけて行った。

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