長編側にいたい

□爪までも愛しい
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割れた窓から軽々しく登場したのはリボーンだった。
軽々しくと表現したのは決して空気を読まずという意味ではなく、体がという表現だ。
小さな体をしているのに、前手合わせをした時は鋭い殺気と覇気を感じた。
少なくとも今まで戦ってきた相手の中で、これほどのオーラを出すものはいない。
強い、と純粋に思ったのは今も変わることは無い。
そんな彼が話があると言った。

「…お前はこの刻印に見覚えはあるか?」

またも軽々しく飛び立ち、着地したのは壁へ垂直に刺さっているフォーク。
先ほど鋭く肩を掠めた武器だ。
ここまで刃先が鋭いと、もうフォークとは呼べる代物ではない。

「無いよ。初めて見た。」

こんな武器も刻印も全て初めて見たものだ。
もし過去に見たことがあるのならば、こんなにも印象が強いものを忘れることは無いだろう。
返事を聞いたリボーンはスーツの内ポケットから一枚の写真を取り出し、それをこちらへ向けてきた。

「じゃあ、こいつには見覚えはあるだろ?」

「!」

小さな懐から出てきた一枚の写真には、綱吉に無理矢理キスをしていたあの少年が映っている。
真っ黒な髪に少し光沢のある黒い瞳、そして小柄な体格。
パーツは変わらないのに、その写真に写っている少年はスーツを身に纏い、雰囲気は自身の目で見た感じとは全く違っていた。
公園で見た時、まるで闇を笑顔で隠しているような姿だったのに、この写真はどうだろう。
そんな闇の部分を隠すことなく光沢のある黒い瞳は、写真越しに鋭く光っている。
直接睨まれている訳でもないのに、ドクドクと脈が動き出すのだ。
それほど深く暗い何かを纏っている。

「直接ツナから聞いた訳じゃねぇが…こいつとツナ、何か関わりを持ったんだろ?」

「…僕の口からは言えないさ。」

彼の事だから、勝手に喋ってしまうのはよくないと思い、口を噤んだ。
彼がその少年に無理矢理キスをされて、僕自身が止めなければそのまま犯されただろうなんて、言えるはずもない。

「そうか。別にそこは深く聞くつもりねぇが…その少年とツナは絶対に近づけてはならねぇんだ。」

「どういうこと?」

彼は再び小さな懐から一枚の紙を取り出し、差し出した。
その紙を受け取り開いてみると、フォルケッタファミリーについてと見出しがある。
そして以下はイタリア語で全て書かれていて、勉強が出来る方の僕でもイタリア語までは取得しておらず、読めない。
それを察したのか、彼はゆっくり口を開いた。

「フォルケッタファミリーとボンゴレファミリーとの間の同盟だ。」

「同盟?」

「ああ。マフィア界でも同盟は勿論ある。お前の家庭教師であるディーノだってボンゴレと同盟を組んでんだ。」

あんな奴を家庭教師として見たことはないのだけれど。
口を挟もうとしたかが、それよりも先にまた彼が口を開いていく。
読み上げられたのはフォルケッタファミリーとボンゴレファミリーの同盟内容だ。
内容は至って普通の内容。
日米同盟や日韓同盟のように、一言で言ってしまえば互いがピンチの時助け合おう。
細かな内容もあるにせよ、それは変わらない。

「この同盟が…破られたんだ。」

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