短編2

□Love story
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「…起、きてたの?」

もう一度小さく唸った後、彼は閉じていた瞼をゆっくりと開けた。
ほら、また瞳には俺しか映っていない。
寝起きのぽけぽけした表情も可愛くて愛しくて堪らない。
この時だけは舌っ足らずに話すから、備わっていないはずの母性本能がくすぐられるのだ。

「はい…目、覚めちゃって。」

腰はずきずき痛み、立てそうにはないけれどそれは内緒。

「そう。」

彼は目を細め綺麗に笑った。
十年前から彼は男の俺から見てもとても綺麗な男性だった。
そして十年経った今、その美貌は十倍…いや何百倍にも増し、昔よりもドキドキしてしまう。
そんな表情で笑われると、俺の瞳だけに映すのは勿体ないと思ってしまう。
勿論他の人に見せたくないけど、ほら…写真とかに残して、毎日それを眺めていたい。
でも、そんな事言うと彼はきっと、写真なんかじゃなくて毎日直接見ればいい、なんて言うと思う。
ゆっくり、彼の顔が近付いたかと思うと、唇にちゅっと軽くキスをされた。
男らしい手で優しく髪を撫でられ、彼の胸へと引き寄せられる。
トクン、トクンと音を刻むメロディーが耳に届いた。

「昨日は激しかったから、今日、ゆっくりしようか。」

「はい。」

「一緒にご飯作って…それで近くの海まで散歩して、君の好きな貝殻探しでもする?」

「ふふっ、はい。」

穏やかな日常。
幸せな時間。
それを彼はいつも俺にくれる。
ちゃんとそれを返せているだろうか、応えれているだろうか。
胸にあった顔を上げて彼を下から見上げると、おでこにちゅとキスをしてくれて幸せそうに笑った。
よかった、ちゃんと返せてるみたい。
ずっとこんな幸せな時間が続けばいいな。
また十年後、なんて想像もつかないけれど、ずっとずっと幸せでいられますように。
俺の人生のノートには、雲雀さんとのlove storyでいっぱいになりますように。

END


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