短編2

□CAP→SAK
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変わらぬ朝だった。
いつものようにぎりぎりまで布団に包まり、母さんの声で慌てて目覚める。
そして急いで階段を降り朝食を口にし、着替えて「いってきます」と声を上げながらドアを開けて出る。
玄関の前には必ず獄寺君が元気な笑顔で待ってくれているんだ。
謝りながら一緒に小走りで登校して、それで途中で山本に会って三人で登校。
何にも、変わらないいつも通りの一日だった。

「どうしたの、獄寺君?」

朝最初に見た笑顔から少し違和感を感じていたのは事実。
見間違いかと思ったが、やっぱり今日の彼は違って見えた。
チラチラとこちらを見、そして目が合いそうになるとパッと反らす、といったように。
どうしたのと問うのもこれで三回目だ。
その度に少し悲しそうな顔をして作り笑いでなんでもないと言う。

「ちょっと、便所に行ってきます!」

「あ、ちょっと!」

いつも通りだと思った一日は、玄関を出るまでの数分だけだった。
獄寺君の様子がおかしいのに気付いているのは俺だけじゃなく、山本だって気付いてる。

「どうしたんだろう、獄寺君…」

「んー?…あーうん」

黒板に視線を向けながら隣にいる山本に聞いたのだが、どこか歯切れが悪い返答が返ってきた。
不思議に思い、視線を山本に移すと、苦笑いをしていた。
あははと軽く笑うだけで何も言おうとしない。
どうしたんだろうな、何かあったのかな、なんて返事が返ってくると思っていたのに。
もしかして、山本は理由を知っているのだろうか?
俺には話してくれないのに、山本には打ち明けているんだろうか。
胸の奥がチクリと痛んだ。

「知ってるの…?山本は。」

「んー…まぁあいつ次第だよな。」

「あいつ次第…?って、」

俺には打ち明けていない悩み事を山本には打ち明けている。
ここで山本を問い詰めて聞いたって、何の意味は無いんだ。
開きかけた口を綱吉はゆっくりと閉じた。
そこにタイミング良く獄寺が帰ってきたことで、尚聞く機会はなくなった。

「どうかしましたか?」

「…ううん、別に。俺もトイレ行ってくる。」

この場に居る事が何だか居心地悪くて、尿意を感じていないのに、逃げるようにその場から去った。

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