短編2

□CAP→SAK
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去る綱吉の後ろ姿を見送った後、獄寺は振り返り山本を見、睨んだ。

「おい、山本お前…」

「俺は何も言ってねぇーよ。ただお前の様子がおかしい理由を俺が知ってるような素振りは見せちまったから、なんか引っ掛かってんだろ。」

「なっ、素振りってお前!」

「お前も分かってんだろ?ツナはそんな奴じゃねぇって。大丈夫だって。」

獄寺自身も勿論分かっていた。
理由、というより、言いたいのは今日が自分の誕生日であるということ。
綱吉が知らないのは言っていなかったから当然で、別に知らなかったから落ち込んでいるんじゃない。
もっと昔からあるトラウマのせいだ。

その日一日は、悩みを打ち明けてくれていないと悲しむ綱吉と、いつ言おうかいつ切りだそうか悩む獄寺で、二人はギクシャクしていた。
そんな二人を見ていた山本は、敢えて間には入らなかった。
下手にその場を和ますと、獄寺が言い出すキッカケを失ってしまうからだ。

「帰ろっか。」

山本は部活なので帰りは二人で帰ることが多かった。
今日も勿論例外ではない。
並中から家までの距離を二人ゆっくり歩きながら帰っている。
今日の朝は何か違和感を感じる、くらいしか思っていなかった綱吉だが、帰りはこんなにも心情が違う。
別にそんなんじゃないのになんだか裏切られたような気分になる。
獄寺にとって山本は大事な友達なのは分かるが、山本よりも信頼度は上だと勝手に思っていた綱吉はショックだった。
帰り道、二人はあまり会話はなかった。
普段は今日あった出来事やテレビの話なんかで盛り上がるのに、しんとしている。
考え込んでいる獄寺が時折思い出したように口を開くも、会話は長続きしなかった。
そして綱吉の家の前まで到着してしまったのだ。
いつもはあっという間なのに、今日は凄く長い距離に感じた。

「じゃあ…また、明日ね。」

「ま、待って下さい…十代目。」

精一杯の笑顔でさよならした綱吉だったが、獄寺に真剣に見つめられ、固まってしまう。
口を開いたり閉じたりと言いにくそうにしていた獄寺だが、ぎゅっと口を紡ぎ、意を決したようにゆっくりと口を開いた。

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