短編2

□真夜中のサンタさん
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12月に入ってからというもの、街はクリスマス一色に染まっていた。
イルミネーションが輝き、スーパーにはサンタ靴の中にお菓子を詰めた商品が陳列している。
アメリカでの盛大なツリー点灯式の映像も日本に届いている。
クリスマスはそれほどまでに大きなイベントなのだ。
俺も小さい頃はクリスマスの朝は楽しみだった。
枕元にはプレゼントが置いてあって、いつだって俺の欲しいものだったからだ。
だが歳はもう中学二年生、14歳なのだ。
サンタの存在など信じて居ないし、周りにだってそんな奴はいない。
恋人も勿論居ない俺にとってはクリスマスなどどうでもいいイベントなのだ。
母さんが張り切ってチキンやクリスマスケーキを作って、それを食べるのだけは好きだけど。

深夜一時頃。
今の時間、小学生の俺だったらとっくに熟睡していて、朝になれば喜ぶ物が枕元にあるのだろう。
でもサンタはこない。
分かっていても少し信じてしまうのが、まだ中学生ってやつだろうか。
すると遠くからベルのようにシャンシャンとなる音が聞こえた。

「ま、まさか…」

本当にサンタは存在するのだろうか…?
その音は次第にこちらに向かっているように聞こえる。
どんどん近づくシャンシャンとなるベルの音に鼓動は早くなるが…その音と共に言い争っている声も混じって聞こえた。

(なに…?二人組?それに喧嘩してる…?)

その喧嘩は口喧嘩という可愛い物ではないようで、殴り合いをしている音が聞こえる。
聞き覚えのある声に、先ほどとは別のドキドキが迫って来ていた。
やめてくれ、本物のサンタであってほしい。…あの二人だけはやめてくれ。

「と、いう訳でメリークリスマス♪綱吉君」

「何君一歩前に出てるの。邪魔なんだけど。」

「君が小さいのがいけないのでは?小さいなら小さいなりに一歩下がっていなさい。」

「小さい…?何いってるのさ。恋人の身長差は10センチくらいが理想なんだよ。そんなのも知らないの?」

二人は互いに武器を出し戦闘態勢に入った。
窓を開けてから早々もう喧嘩が始まってしまったではないか(しかも下らないことで)
ここまで喧嘩をするなんて、逆に仲がいいのではと思うほどに。

「もう、やめてください!」

深夜一時なのだ。
それにこの二人が戦闘を始めてしまうときっとこの家は朝には無くなっているだろう。
クリスマスの朝に家が無くなった話なんて聞いたことがない。
そんな目に合いたくないから必死に二人を止めた。

「綱吉君がどうしてもっていうなら止めますけど…原因は彼ですからね。」

「何言ってるの。どう考えたって君が悪いに決まっている。」

「わ、分かりましたから!そうやってまた喧嘩になるから、冷静に!冷静に、ね?」

言うと二人はしぶしぶといった表情で武器を仕舞ってくれた。
お互いにまだ減らず口が開きそうだったので、キッと睨めば、可愛いですなんて意味の分からないことを言われた。

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