短編2

□しようチュー?
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「そういえばディーノさん、今日こんな所にいて大丈夫なんですか?」

今日がバレンタインであることを思い出した綱吉はディーノに尋ねた。
ボスだしカッコイイしイタリア人である彼がこんな日にこんな所で油を売っていていいものだろうか。
きっと彼を探している女性は何人もいるだろう。

「んーまあ今日だからここに来たってのもあるしな。」

「え?」

彼は頬をポリポリと掻きながら照れくさそうに笑った。
一体どういう意味だろうか?
大勢の女性に追われてるから逃げて来た、という訳だろうか?
何も分かっていない綱吉を見てディーノは心の中でため息をついた。
まあそんな鈍感な綱吉だからこそ目に見えて分かる雲雀の心にも気付いていないのだろうが。

「ボスからの餞別、ねぇの?」

ディーノは綱吉の目の前に手を差し出した。
その手を三秒程見つめてやっと理解したのか、ああっと言い少し困った顔をした。
当り前だ。今日ここにディーノが来る予定などなかったし、守護者達へのバレンタインも用意していない。
どうしようか。確か使用人達が作ったチョコレートがあったっけ。
下の階にあるであろうそれを取りに行こうとした綱吉であったが、ふと足を止めた。

「ツナ?」

机の上には書類達に隠れて可愛いバレンタインチョコがある。
赤いリボンとピンクのタータンチェック柄の包装紙に包まれている正方形な箱。
今年で最後、なんて言いながら最初から渡す気なんて更々無かった。
今日という一日が終われば自分で食べてしまおうと、そう思っていた。
でも折角だし、来てくれたディーノに渡してしまおう。
そう思い、綱吉はその正方形の箱をディーノに差し出した。


「はい。ディーノさんにプレゼントです!」

「…あ、ありがとな。」


ディーノは綱吉に好意を寄せていた。
毎年雲雀に渡そうと密かにチョコレートを用意しているのもリボーンから聞いていた。
そして毎年渡せずにいることも。
だったらそれを捨てたり食べたりするんじゃなくて、横取りしてしまおうと思った。
手を差し出した時、困った顔をしているのはすぐに分かった。
なーんてな、って冗談で言おうと思っていたら、雲雀へ渡す用のチョコレートであろうそれをくれたのだ。
「自分用として買ったんですけど、店員さんに勧められて二個買っちゃったんで、それあげます。」
「ははっ何だ押し売りされたのか?」
それから他愛もない話を数分して、ディーノは部屋を後にした。
手には欲しかったはずのチョコレートが握られているのに、全然嬉しくなかった。
気持ちの入っていないそれはただのお菓子だ。
こんな可愛くラッピングされた物を綱吉はどんな気持ちで買ったのだろう。
雲雀のことを思いながら沢山ある種類の中から一生懸命選んだのだろうか?
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