短編2

□ひしょつな!
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朝、丁度通勤時間には沢山のサラリーマンやOLが仕事先目掛けて足を進める。
忙しいのだ、足を止める訳にはいかない。
そんな朝の時間、雲雀は同じように仕事先へと高級ベンツを走らせているが、必ず毎朝寄って行くコンビニがある。
街中だからわざわざパーキングに止めて、だ。

「いらっしゃいま、あ…」

店内は駅の近くという事もあり、サラリーマンやOLで混雑している中、レジで忙しく対応している一人の少年。
沢田綱吉だ。
雲雀の来店に気が付くとニコリと微笑み、でもすぐに並んでいる客の会計をしていた。
毎朝その笑顔を見る為だけに少し早い時間に出て、わざわざパーキングに止めてまで来ているのだ。

あれは丁度一か月くらい前の事。
目覚まし時計を掛けるのは昔から嫌いだったし、いつも決まった時間に起きるので油断をしていたのか、その日は寝坊してしまったのだ。
使用人もその日たまたま休みで不運が重なった一日だった。
別に社長なんだから、遅刻したって構わないんだけれど、自分的に風紀が乱れることはしたくなかった。
目覚めた時間は家を出る十分前。
道が混んでいなければ車で行くと間に合う距離なのだが、生憎この時間は通勤ラッシュな為そう甘くはない。
電車は人がぎゅうぎゅうに込み合っているのが嫌で避けていたけれど、今日は我慢するしかない。
急いでスーツに着替え、ネクタイを結ぶと、雲雀は駅へと足を進めた。

駅に向かう途中、一件のコンビニが目に入った。
ここは都会で街中だ。
コンビニなんて数メートルに一件あるというのに、何故かそこのコンビニだけ目に入ったのだ。
そういえば今日は朝食も食べていないし、何か買って会社へ行こう、そう思いコンビニへと入って行った。
そこで雲雀は運命の出会いをしたのだ。
忙しいのに、自動ドアが開き軽快な音が鳴る度にいらっしゃいませと一客一客に笑顔を見せる少年。
雲雀も例外でなく、その少年にいらっしゃいませという言葉と共にキラキラとした笑顔を向けられた。
普段あまりコンビニなんて来ないが、たまに来ても無愛想な店員がレジをしているイメージだったのに。

「…」

トクン、とときめいた自分が居た。


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