短編

□好きの呪文
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なんなんだろう、この状況は。


〔好きの呪文〕


「2−A沢田綱吉。今すぐ応接室に来ること。」

只今5時間目の授業中である。
お昼ご飯を食べて、ポカポカの日差しに当たれば睡魔はあっという間に襲ってくる。

もちろん俺も例外じゃなくて、今まさに寝にかかろうとした時に、校内放送が流れた。

声の主は誰もが恐れる、並盛中学校風紀委員長、雲雀恭弥である。
だが俺にとっては、そうじゃなくて、恋愛対象として好きな相手だ。


寝にかかったみんなはバッと起き上がり、俺を見ていた。
呼び出された本人、つまり俺は驚きなのか、緊張なのか分からないが、心臓がドドドッと早まっていった。

「ははっ、ツナ、ヒバリに何したんだよ。」

隣に座っている山本が話しかけてきた。
何をしたって、俺が聞きたい。

今日は1度だって雲雀さんと話してないし、会ってすらない。

ただ俺を呼び出すことはよくあるのだ。
何の用件かというと、リボーンの事だった。
あの赤ん坊は何者なのか、今日は来ていないのか、とかとか。

雲雀さんは俺になんて興味がないことは、俺がよく分かっていたから、この感情は一切口にしないことにしている。
気持ちだけ伝えるとか、そういうことも出来ないのがダメツナだってよく理解していた。

「おーいツナ?お前早く行ったほうがよくね?」

山本の言葉でハッと我に返り、席を立った。

「う、うん。行ってくるよ。」

先生の顔を見ると、早く行きなさいと催促をされた。

俺は頭をペコリと下げると、応接室まで走った。
走ったら雲雀さんに怒られるとか、そんな考えはなかった。

少しでも早く行かないと咬み殺されるっという感情よりも、少しでも早く雲雀さんに会いたいと思い、足を速めた。

コンコン

息を切らしながら応接室のドアを叩くと、中からどうぞと声が聞こえた。

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