短編
□好きの呪文
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「…失礼します。」
遠慮がちにドアを開くと、やあと微笑む雲雀さんが居た。
たまに笑う雲雀さんの顔は本当にかっこよくて、男の俺でも惹かれてしまう。
こりゃ裏でファンクラブがあるのは当たり前か、とふと思っていた。
「…」
「…」
「…またリボーンの事ですか?今日は一緒じゃないですよ。」
本当は核心に触れたくなかった。
そうしたら少しの時間でも、雲雀さんと一緒に居れるからだ。
だけど、雲雀さんが出す沈黙はあまりに重くて、思わず俺は声を出した。
「いや、今日はあの赤ん坊の事じゃないよ。」
言うなり雲雀さんは椅子から立ち上がり、俺の元へ歩み寄ってきた。
(え、何何?ち、近い…)
雲雀さんが近くになるにつれて、俺の心臓はまた五月蝿く響いた。
「こっちに来なよ。」
「う…わぁっ」
俺の手首を掴むと、一気に引き、俺はソファーにボフンと座った。
雲雀さんは俺を見下したかと思うと、ふあぁと一つ欠伸をして、俺の膝に頭を乗せた。
所謂膝枕だ。
「ヒ、ヒバリさん!?あの、この状況は…」
「丁度枕が欲しかったんだ。寝る。」
言った3秒後にはすぅすぅと寝息を立てて寝てしまった。
(この為に俺は呼び出されたのかな…?)
嬉しいやら何やら複雑だったが、そこらへんの生徒よりは少しは心を許してくれているのかと思うと、頬が緩んだ。
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